店舗の敷地の広大地判定の仕方

2019年6月11日

広大地は、一昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。

店舗及び駐車場に供されている土地は、広大地に該当するか!

(関裁(諸)平25第54号 平成26年6月24日裁決)

1.本件土地の概要

(1)
地積8,204.19㎡、形状はほぼ長方形の一団の宅地
北側国道(本件国道という)に接面、南東側○○に接面する角地である。
本件国道から約50mの部分(3,141.23㎡)…準住居地域それ以外の部分…第一種低層住居専用地域

(2)本件土地は、本件被相続人らが共有する鉄骨造2階建店舗(1階3362.59㎡、2階3321.00㎡以下本件店舗という)の敷地及び本件店舗附属の駐車場となっていると共に家具・インテリア用品の販売を営む○○に貸付けられている。

(3)本件相続土地8021.01㎡のうち本件店舗の敷地5907.83㎡附属の駐車場部分2113.18㎡である。

2.請求人の主張

評価通達24-4の都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が広大地に該当しないとした事例必要と認められるもの」は、「最有効使用」を前提として判断すべきであるが、最有効使用とは、当該宅地が最も高い価格となる利用方法を指し、当該宅地の属する地域の標準的な用途に使用することが必ずしも最有効使用となるわけではない。

本件土地の属する「その地域」の標準的な用途は大規模店舗等の敷地であるが、本件土地について、その利用方法を大規模店舗等の敷地であるとして、収益還元法により価格を試算すると764,000,000円になるのに対し、その利用方法を戸建住宅分譲用地として開発法により価格を試算すると925,000,000円となり、本件土地の資産価格は、戸建住宅分譲用地とする方が大規模店舗等の敷地とするよりも高くなる。
したがって、本件土地の最有効使用は戸建住宅分譲用地である。

そして、本件土地を戸建住宅分譲用地として利用するには、道路を敷設する必要があるから、本件土地は、公共公益的施設用地の負担が必要な都市計画法に規定する開発行為を行わなければならない土地に当たる。

よって、本件土地は、評価通達24-4に定める広大地に該当する。

3.原処分庁の主張

本件土地が属する「その地域」は、いわゆる郊外路線商業地域であり、本件土地も、現状の大規模な地積を生かし大規模店舗等として一体利用するのが合理的である。

したがって、本件土地の最有効使用は大規模店舗等の敷地となる。

そして、本件土地を大規模店舗等の敷地として一体利用する以上、本件土地について都市計画法に規定する開発行為は不要である。

よって、本件土地は、評価通達24-4に定める広大地には該当しない。

4.審判所の判断

(1)認定事実

イ 「本件地域」においては、家電や日用品の大規模店舗、ファミリーレストラン等の飲食店、自動車の販売店、修理工場、倉庫、ガソリンスタンド及びこれら商業施設の附属駐車場等が立ち並んでいる。

ロ 本件地域には、58棟の建物があるが、このうち店舗ないし倉庫等の商業施設は49棟(以下、これら施設を総称して「地域内商業施設等」という。)、戸建住宅は5棟、集合住宅は4棟(うち1棟は1階部分が店舗になっている。)である。

ハ 地域内商業施設などの敷地の地積は、平均すると2,122.35㎡であるが、最小の土地の地積は142.90㎡であり、最大の土地の地積は11,556.26㎡である。
また、地域内商業施設等のうち25棟の商業施設の敷地の地積が1,000㎡を超えており、さらに、そのうち4棟の敷地の地積は約10,000㎡である。

ニ 本件土地の本件国道を挟んだ北側の土地(以下「近隣A土地」という。)及びその東側の土地(以下「近隣B土地」という。)は、本件相続開始日において、それぞれ畑及び倉庫の敷地となっていたが、平成25年秋頃、近隣A土地には家庭電化製品等を販売する商業施設が、近隣B土地には主にスポーツ用品を販売する商業施設がそれぞれ建設され、現在各々営業中である。
なお、近隣A土地及び近隣B土地とも、店舗建物の下も含めて敷地全体を専用駐車場として利用しており、その駐車場面積(敷地面積)は近隣A土地で約6,000㎡近隣B土地で約4,700㎡である。

(2)当てはめ

イ 標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であるか否かについて

本件における「その地域」の範囲は、その標準的な宅地の利用状況は、大規模商業施設及びその附属駐車場用地であると認められる。そして、これら商業施設及び附属駐車場の宅地の地積の平均は2,112.35㎡であるが、本件地域における宅地の地積は約100㎡から約10,000㎡と広範囲にわたりつつも、その半数以上が1,000㎡を超えていることからすると、本件地域における標準的な宅地である大規模商業施設の敷地及びその附属駐車場の敷地の地積は1,000㎡から4,000㎡程度までの規模であると認めるのが相当である。

よって、本件土地の地積8,204.19㎡は、上記の標準的な宅地の地積である1,000㎡から4,000㎡程度までの規模に比して著しく広大であると認められる。

ロ 本件土地を経済的に最も合理的な特定の用途に供するために開発行為を行うとした場合、公共公益的施設用地の負担が必要であるか否かについて

(イ)本件土地の最有効使用について

A 本件土地の属する本件地域の土地のほとんどは、大規模商業施設及びその附属駐車場として利用されており、本件相続開始日後も本件地域内の近隣A土地及び近隣B土地に新たに広大な敷地を有する商業施設が2店舗開店するなど、一層の商業地域化が進められている地域である。

とすると、本件土地も、本件地域に属する土地として、大規模商業施設及びその附属駐車場として利用するのが経済的に最も合理的であるといえ、本件土地の最有効使用は、大規模商業施設及びその附属駐車場用地と認めるのが相当である。

そして、このようにして判定された最有効使用を前提に、取引事例比較法、開発法といった鑑定手法の中から、当該土地に合った合理的な手法を用いて土地の価額を算出するのである。
ところが、請求人らの主張は、要するに土地の価格を先に算出した上で当該土地の最有効使用を検討するというものであり、これは土地鑑定の理論からすると全く逆の手順なのであって、独自の見解と言わざるを得ず、採用の限りではない。

(ロ)本件土地に開発行為を行うとした場合、公共公益的施設用地の負担が必要であるか否かについて

上記のとおり、本件土地の最有効使用は大規模商業施設及び附属駐車場用地であるところ、本件土地を大規模商業施設及び附属,駐車場用地の用に供するに当たっては、本件土地が8,204.19㎡と本件地域の宅地の規模と比較して広大であることを考慮しても、上記のとおり、近隣A土地及び近隣B土地のように、本件地域に存する商業施設が広大な附属駐車場を持ち、場合によっては敷地内だけでなく近接の土地にまで駐車場用地を確保していることにかんがみれば、あえて本件土地を開発行為により区分等する必要性は乏しく、本件土地は現状の規模を維持したまま、大規模商業施設及び附属駐車場用地として使用するのが相当であると認められる。かかる使用方法が合理的であることは、上記(2)ハのとおり、本件地域内では現に本件土地を超える約10,000㎡の地積を持つ土地が大規模商業施設及び附属駐車場用地として一体的に利用されていること、また、本件相続開始日前から、本件被相続人及び請求人らの一部が、■■■に対し、本件土地をひとつながりの土地としたまま店舗及びその附属駐車場を賃貸していた事実からも裏付けられる。

したがって、本件土地をその最有効使用たる大規模商業施設及び附属駐車場用地の用に供するに当たって、開発行為は不要であり、当然、公共公益的施設用地の負担も必要ない。

ハ 結論

以上のとおり、本件土地に開発行為は不要であり、当然、開発行為に伴う公共公益的施設用地の負担も必要ないから、本件土地は評価通達24-4に定める広大地に該当しない。

(4)本件各通知処分について

以上のとおり、本件土地は評価通達24-4に定める広大地に該当しないところ、これを踏まえて本件相続土地の評価額を評価通達に従って算定すると920,407,667円となり、別表3の請求人らの当初申告における評価額と同額である。

よって、請求人らの各更正の請求に対し、更正をすべき理由がないとした本件各通知処分はいずれも適法である。

以 上

コメント

広大地に該当するか否かの判断基準の一つに、「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であること」があります。

国税庁のHPによれば、広大地の評価における「著しく地積が広大」であるかどうかの判断」について以下のように述べています。

評価対象地が都市計画法施行令第19条第1項及び第2項の規定に基づき各自治体の定める開発許可を要する面積基準(以下「開発許可面積基準」といいます。)以上であれば、原則として,その地域の標準的な宅地に比して著しく地積が広大であると判断することができます。

なお、評価対象地の地積が開発許可面積基準以上であっても,その地域の標準的な宅地の地積と同規模である場合は、広大地に該当しません。

しかし、その地域における「標準的な宅地の地積」とは、何を指すのかについては、評価基本通達では明らかにしていません。「標準的な宅地の地積」は、その地域の宅地の平均的な地積のことをいいますが、その平均的な地積は、裁決事例等によれば、公示地や基準地の地積や開発事例の地積等を参考に、その地域の標準的な宅地の地積を求めているようです。

本件の場合には、本件地域(その地域)内の土地・建物のすべてを調査し、本件地域(その地域)の標準的な宅地の地積を求めています。審判所は、本件地域内の土地・建物の登記事項証明書を見て1つ1つ敷地の規模等を確認し、本件地域には58棟の建物があって、うち商業施設が49棟その49棟の建物の敷地の平均地積は2,122.35mで、本件地域における標準的な宅地である大規模商業施設の敷地の地積は1,000mから4,000m程度までの規模であると確認しています。

そういう状況の中ポイントになるのが、「本件相続開始日後も、本件地域内の近隣A土地(約6,000m)および近隣B土地(約4,700m)に新たに広大な敷地を有する商業施設が2店舗開店するなど、一層の商業地域化が進められている」と本件地域が商業地としてより一層商業地へ移行しつつあると事例をもって本件地域の特性を証明していますので、反論できないのではないでしょうか。

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/