本件土地は公共公益的施設用地(道路)が必要な土地か否か!
広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。
本件土地は公共公益的施設用地(道路)が必要な土地か否か (東裁(諸)平22第5号 平成22.7.2裁決)
本件土地の概要
本件土地の面積:1014.07㎡ 相続開始時、自宅の敷地として使用していた。用途地域:第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率60%)、幅員約6.5mの道路に接面する間口約17.5m、奥行約41mのやや不整形な土地
原処分庁の主張
イ 本件通達に定める「その地域」について
本件土地について、「その地域」とは本件土地が所在する第一種低層住居専用地域(以下「本件用途地域」という。)をいうと解すべきである。
ロ 本件通達に定める「標準的な宅地の地積」
本件用途地域内に所在する公示地の地積は513㎡であり、基準地の地積は442㎡であること、また、これらの地積に近似する地積により土地が売買されている実例が複数あることからみて、本件土地が所在する地域における標準的な宅地の地積は、おおむね500㎡程度であり、本件土地の地積は、標準的な宅地の地積に比して著しく広大である。
ハ 本件通達に定める「公共公益的施設用地の負担」の要否について
本件土地について、標準的な宅地の地積である500㎡程度の区割りにより開発想定図を作成すると、別紙2-1のとおりとなるから、公共公益的施設用地の負担は必要ない。
ニ したがって、本件土地は広大地に当たらない。
請求人ら
イ 本件通達に定める「その地域」について
本件土地について、「その地域」とは、本件地区計画が定められている本件地区内の地域をいうべきである。
ロ 本件通達に定める「標準的な宅地の地積」
本件地区は、昭和40年代に土地区画整理事業によって開発された住宅街であり、分譲時には500㎡を超える大規模な住宅地が多数あったが、時の経過とともに分譲、転売などが行われた結果、小規模な宅地も多く生じるようになり、地積の細分化が進行している地域である。
本件地区について、■■■に認可された第Ⅱ期建築協定では、最低敷地面積は200㎡以上と定められ、更に10年後の■■■に認可された第Ⅲ期建築協定では180㎡以上へと引き下げられている。
平成17年から平成19年の間に本件地区内における土地の売買実例は、比較的小規模な地積、特に200㎡から250㎡の土地の取引が多く、原処分庁が主張する500㎡程度の土地の取引は少数であった。
したがって、本件地区内における標準的な宅地の地積は200㎡から250㎡であり、本件土地の地積は、標準的な宅地の地積に比して著しく広大である。
ハ 本件通達に定める「公共公益的施設用地の負担」の要否について
本件土地は正面路線と側方路線に接道しているものの、側方路線は歩行者専用道路であるから、分割されたすべての敷地が車両の通行可能な正面路線に接道するよう分割する必要がある。
したがって、本件土地は、別紙3の開発想定図の通り、道路を敷設して宅地分譲するのが合理的であるから、公共公益的施設用地の負担が必要な土地である。
なお、原処分庁が予備的に主張する別紙2-2の開発想定図は、幅3mの通路部分が約20mもあり、形状が悪いため価値が著しく低下するおそれがあること、防災や防犯等の観点からも問題があることなどから、本件土地の最有効使用とはいえない。
ニ したがって、本件土地は、広大地に当たる。
判断
(1)認定事実
請求人らの提出資料、原処分鑑定資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 本件地区は、本件地区計画により、さらにA地区(約41.0ha)とB地区(約3.4ha)とに区分されており、本件土地は、A地区内に所在している。
ロ 審判所において、平成21年1月1日現在における本件地区内の戸建住宅の敷地規模について、ほぼ網羅的に調査したところ、次のとおりである。
(イ)A地区816件のうち、その一画地の地積規模が、200㎡未満のものが104件、200㎡以上250㎡未満のものが122件、250㎡以上350㎡未満のものが175件、350㎡以上500㎡未満のものが281件、500㎡以上のものが134件であった。
(ロ)B地区141件のうち、その一画地の地積規模がものが123件あり、このうち最低敷地面積(180㎡)に満たないものが108件あった。また、200㎡以上250㎡未満のものが11件、250㎡以上350㎡未満のものが3件、350㎡以上500㎡未満のものが4件であり、500㎡以上のものは存在しなかった。
ニ A地区は、クルドサック方式の道路(住宅地内における自動車の通り抜けができないようにし、突き当り部分をロータリーとする道路。)を主体とした町並みであるのに対し、B地区は当該方式を採用していないこと、また、B地区は、A地区に比べ敷地面積が狭く、建物と建物の間隔も狭いことから、両地区の町並みには、明らかな差異が認められる。
(3)あてはめ
イ 本件通達に定める「その地域」について
これを本件土地についてみると、本件土地の所在する地域は、上記1の(4)のホのとおり、本件地区計画が定められているところ、上記(1)の各事実のとおり、本件地区の中でも、制約の内容が異なるA地区とB地区とでは、現実の利用状況及び環境にも明らかな差異が認められるから、本件土地が所在する「その地域」の範囲は、本件地区のうちA地区(以下「本件地域」という。)であるというべきであり、これに反する請求人ら及び原処分庁の主張は採用できない。
ロ 本件通達に定める「標準的な宅地の地積」について
(イ)本件相続開始日前後における本件地域内の宅地は、上記のとおり、一画地につきて350㎡以上の地積のものが半数以上であり、上記のとおり、一画地につき350㎡以上の地積のものが半数以上であり、上記のとおり、本件地域内において土地の利用状況、環境、地積、形状等について標準的な画地として選定された公示地及び基準地の地積がそれぞれ513㎡及び442㎡であることも考慮すると、本件地域における「標準的な宅地の地積」は、おおむね400㎡から500㎡程度であると認めるのが相当である。
ハ 本件通達に定める「公共公益的施設用地の負担」の要否について
上記ロによれば、本件土地の地積は、その地域における「標準的な宅地の地積」に比して著しく広大であるものの、「標準的な宅地の地積」であると認められるおおむね400㎡から500㎡程度の地積で分割するとすれば、原処分庁が主張するとおり、2区画に分割することになるから、道路等の公共公益的施設用地の負担を要することなく分割して、本件地区計画における土地利用の方針にも合致した低層住宅地に供することができる。
そうすると、本件土地は公共公益的施設用地の負担を必要とする開発行為を行わなければならない土地であると認めるのは相当でない。
ニ したがって、本件土地は、本件通達に定める広大地に該当しない。
※本件土地の相続税評価額
①請求人ら主張額(広大地適用)
119,759,638円
②原処分庁主張(広大地不適)
196,555,159円
③国税不服審判所の決定の評価額
196,555,159円
以 上
コメント
その地域の標準的な画地の標準的な宅地の地積の決め方については、決められた方法があるわけではありませんが、本件においては、審判所がA地区B地区内の戸建住宅の敷地規模について網羅的に調査したと本文において述べています。
その結果は下記の通りです。
「本件相談開始日前後における本件地域内の宅地は……1画地につき350㎡以上の地積のものが半数以上であり、本件地域内の………公示地および基準地の地積がそれぞれ513㎡iおよび442㎡であることも考慮すると、本件地域における「標準的な宅地の地積」は、おおむね400㎡から500㎡程度であると認めるのが相当である。」
「本件土地の地積は,その地域における「標準的な宅地の地積」に比して著しく広大であるものの、「標準的な宅地の地積」であると認められるおおむね400㎡から500㎡程度の地積で分割するとすれば、原処分庁が主張するとおり、2区画に分割することになるから、道路等の公共公益的施設用地の負担を要することなく、分割して、本件地区計画における土地利用の方針にも合致した低層住宅に供することができる。そうすると、本件土地は公共公益的施設用地の負担を必要とする開発行為を行わなければならない土地であると認めるのは相当でない。したがって、本件土地は本件通達に定める広大地に該当しない。」
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)