広大地に該当するか否か
その地域における標準的な宅地に比して著しく地積が広大な土地であるから、広大地に該当すると言えるかが争われた事例
(東裁(諸)平24第123号 平成24年12月13日裁決)
1.本件B土地の概要
本件B土地の概要
本件B土地は、幅員約25mの市道と幅員約6mの市道(二方路)に接面するほぼ台形状の土地である。
本件B土地の地積は、1,464.38㎡。
本件B土地は、駅から約4km(直線距離)に位置する。
本件B土地は、その全体を本件会社に賃貸されて、本件会社は駐車場として賃貸の用に供している。
本件土地の属する用途地域は、準住居地域(60,200)と第一種住居地域(60,200)に跨っている。
また、本件B土地の一部分(1,464.38㎡のうち613.69㎡)は、都市計画予定地に該当している。
上記25mの市道(以下本件B市道という)は、広域幹線道路と位置付けられていて、バスの通行する道路でもある。
2.争点
本件B土地は広大地に該当するか否か。
3.原処分庁の主張(争点2:本件B土地は広大地に該当するか)
本件B土地は、次のとおり、広大地に該当しない。
(イ)本件B土地に係る広大地通達に定める「その地域」は、利用状況、環境等がおおむね同一であることから、本件B土地の存する準住居地域のうち、北側を本件B土地の北西側で接する市道(以下「本件B市道」という。)、南側を■■■■によって、それぞれ区切った地域である。
(ロ)本件B土地は、次の理由から、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な土地に該当しない。
A 上記(イ)の地域においては、①その一部が戸建住宅の敷地として利用されているものの、その他の大部分は大規模な大規模店舗及びファミリーレストラン並びにこれらに隣接する駐車場として利用されていること、②平成10年以降、戸建住宅用地の開発事例がないことから、同地域の最有効使用は大規模店舗及びファミリーレストラン並びにこれらに隣接する駐車場の敷地である。
B 上記(イ)の地域には、大規模店舗及びファミリーレストランの敷地が7箇所あり、その敷地面積の平均が約1,300㎡であるから、地積が1,464.38㎡である本件B土地は、細分化せずに一体として有効利用することができる。
4.請求人らの主張(争点2:本件B土地は広大地に該当するか)
本件B土地は、次のとおり、広大地に該当する。
(イ)本件B土地に係る広大地通達に定める「その地域」は、■■■沿いと本件B市道沿いを除いた、これらの道路と■■■■■で囲まれた地域である。
(ロ)本件B土地は、駐車場のみに利用されており、現に宅地として有効に利用されている建築物等の敷地に該当しないから、広大地通達が適用できるか否かは、①マンション適地に該当するか、②戸建開発をするとした場合に潰れ地が生じるか、によって判断すべきである。
(ハ)本件B土地は、駐車場のみに利用されており、現に宅地として有効に利用されている建築物等の敷地に該当しないから、広大地通達が適用できるか否かは、①マンション適地等に該当するか、②戸建開発をするとした場合に潰れ地が生じるか、によって判断すべきである。
(ニ)よって、本件B土地の最有効使用は、戸建住宅の敷地の分譲素地である。
そして、本件B土地の周辺の地域において、一般的に路地場開発が行われているとはいい難いから、
道路開設による開発が必要であり、公共公益的施設用地の負担が生じる
判所の判断(争点2:本件B土地は広大地に該当するか)
(1)当てはめ
イ.本件B地域における標準的使用及び本件B土地に係る公共公益的施設用地の負担の要否について
①本件B地域は、低層の小売店舗及び飲食店等(来客用駐車場含む。)が比較的多く建ち並んだ地域であること、
②本件B地域には、①のような小売店舗及び飲食店等(来客用駐車場を含む。)が8箇所存在し、これらの地積は、最小約500㎡、最大約3,100㎡で、平均すると約1,300㎡であることを総合勘案すると、
本件B地域における土地の標準的使用は、低層の小売店舗及び飲食店等(来客用駐車場を含む。)の敷地であり、その地積は500㎡程度ないし3,100㎡程度であると認められる。
そうすると、本件B土地の地積(1,464.38㎡)は、本件B地域における土地の標準的使用の状況に照らし、広大地通達における「標準的な宅地の地積」に比して著しく地積が広大な宅地であるとはいえない。
また、本件B土地の地積(地積1,464,38㎡)は、仮に本件B地域における標準的使用に基づく宅地のうち、本件B市道に接面する箇所の地積700㎡の規模の区画に区分することを想定したとしても、2区画程度となり、これらがすべて本件B市道に接面するような合理的な区分も可能であるから、開発想定図を用いて検討するまでもなく、開発行為を行うに際して公共公益的施設用地の負担が必要であるとは認められない。
ロ.結論
したがって、本件B土地は、広大地には該当しない。
ハ.請求人らの主張について
(イ)請求人らは、本件B土地に係る広大地通達に定める「その地域」は、■■■沿いと本件B市道沿いを除く、これらの道路と■■■■■で囲まれた地域(別紙6の(注)4の地域)である旨主張する。
しかしながら、上記のとおり、本件B土地は本件B市道沿いにあること、そして、同市道と■■■が交差する■■■交差点を基点とする本件B地域とそれ以外の周辺地域の利用状況等が異なることからすれば、請求人が主張するように、本件B市道及び■■■沿いを除く地域(本件B地域の周辺地域)をもって、本件B土地に係る広大地通達に定める「その地域」に当たるとするのは相当でない。
(ロ)また、請求人らは、本件B土地は、駐車場のみに利用されており、現に宅地として有効に利用されている建築物等の敷地に該当せず、戸建住宅の分譲素地が最有効使用である旨主張する。
しかしながら、①上記のとおり、本件B地域における土地の標準的使用の状況は、低層の小売店舗及び飲食店等(来客用駐車場を含む。)の敷地であること、また、②上記のとおり、本件B市道沿いは、■■■庁舎前にある乗継場を経由するバスの通行に伴う騒音、排気ガス等に晒される環境にあることなどを考慮すると、同市道に接面する本件B土地の最有効使用が戸建住宅の分譲素地であるとは認められない。
(ハ)したがって、請求人らの主張は、いずれも採用することができない。
ホ.本件B土地の相続税評価額について
以上のとおり、本件B土地は広大地に該当しないから、これを前提に、当審判所において本件B土地の相続税評価額を計算すると、別紙11の2のとおり、別表3の原処分庁が主張する相続税評価額と同額となる。
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コメント
広大地に該当するか否かの判定をするにあたり、その要件の1つとして、「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大である」ことが必要となります。
本件B土地の属するその地域は、
①低層の小売店舗及び飲食店等が比較的多く建ち並んだ地域であること
②小売店舗及び飲食店等が8か所存在し、これらの地積は、最小約500㎡、最大約3100㎡で、平均すると約1300㎡であること、を勘案すると、本件B地域における土地の標準的使用は、低層の小売店舗及び飲食店等の敷地であり、その地積は500㎡程度ないし、3100㎡程度である、としています。すると本件B土地(1464.38㎡)は広大地通達における「標準的な地積」に比して著しく地積が広大な宅地とはいえないので、本件B土地は広大地には該当しないとしています。
別添地図を見て頂ければ分かりますが、本件B土地の前面道路沿い等に店舗が張り付いているのがお分かり頂けると思います。これは路線商業地域沿に該当するのではないかと思います。このような路線商業地域に該当するときは、その路線沿いのみをその地域として範囲を狭く取らないと判断を誤る場合があるので、要注意です。
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)