マンション適地か否か!

2019年6月11日

本件土地は、マンション適地等に該当するから、戸建分譲を前提とした請求人ら及び原処分庁の主張についてはいずれも採用できないとした事例

(関東信越・公開 平成19年7月9日裁決・平19-3号)

1.本件土地の概要

本件土地の地積は、1279.03㎡の土地で、被相続人の自宅の敷地として使用されていた宅地である。本件土地R駅から約1kmに位置し、南側幅員16mの都市計画道路(S通り)、東側で幅員約8mの市道北側で幅員6mの市道三方路に面した矩形の平坦な土地である。

本件土地の属する用途地域は、第二種住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)である。

2.争点

本件土地は、本件通達に定める広大地に当たるか。

3.請求人らの主張

イ 本件土地は著しく地積が広大な土地であるから、別紙2の図1のとおり、本件土地近隣の標準的な分譲面積である100平方メートルから120平方メートルで本件土地を画地割すると、幅員4メートルの通り抜け道路が必要となり、この通り抜け道路用地は、本件通達に定める公共公益的施設用地に該当するから広大地として評価すべきである。

なお、P市では、P市■■条例第■条及び第■条において、300平方メートル以上の土地の開発の場合には、開発地に接する幅員6メートル以上(同条例施行規則第■条により、最低でも幅員4メートル以上)の道路の確保を義務づけている。

ロ 原処分庁の主張する分割図である別紙2の図2及び図3は、次のとおり評価通達の趣旨に反するものである。

(イ) 標準的な画地割とは画地補正率を限りなく1.0に近い画地に分割するものであり、路地状敷地のように、かげ地割合が生ずることにより不整形地補正率及び間口狭小補正率等の補正率を用いて評価減を要するような画地を生じさせる画地割は不自然であり、別紙2の図2及び図3とも西側に標準的な分譲面積を超える150平方メートルから169平方メートルの路地状敷地が必要となり、標準的な画地割とはいえない。

4.原処分庁の主張

イ 本件土地について開発行為を行う場合は、別紙2の図2及び図3のように画地割することにより、通り抜け道路のような公共公益的施設用地となる地積を生じさせることなく開発許可を受けることができる。

ロ 請求人らが主張する別紙2の図1の画地割は、道路用地として206平方メートルに相当する土地の負担が生じ、有効宅地面積は1,073平方メートルにとどまることから、別紙2の図2及び図3の画地割に比して必ずしも経済的に合理的であるとは認められない。

ハ また、請求人らは、別紙2の図2及び図3は、路地状敷地を生じさせる不自然な画地割である旨主張するが、路地状敷地とすることにより、容積率及び建ぺい率の算定に当たっては、路地状部分の面積も画地面積に含まれるため、より広い建物を建てることが可能となり、また、価格や用途の異なる購買者の資力に応じた物件提供も可能となるから、別紙2の図2及び図3の画地割は、経済的合理性があり、本件通達の趣旨に反する不自然なものではない。

5.審判所の判断

(1)本件通達について

本件通達では、広大地から除かれる土地として、中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの(その宅地について、経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるものをいい、以下「マンション適地等」という。)を定めている。

したがって、評価対象地がマンション適地等と認められる場合には、通常、公共公益的施設用地となる部分の地積の負担が生じないため、広大地の評価の適用がないとする本件通達の定めは、当審判所においても相当であると認められる。

(2)認定事実

イ 用途地域及び利用状況

(イ) 本件土地を含むU地域のS通りの沿道は、第二種住居地域に指定され、一定の工場や劇場などの建築が制限されるほかは、事務所や店舗の建築については制限がなく、戸建住宅のほか、アパート、マンション、1階部分が店舗又は事務所で2階以上が集合住宅である建物(以下「店舗併用集合住宅」という。)などの中高層の集合住宅及び事務所、大規模な店舗などの商業施設が混在する地域となっている。

そして、S通りの沿道の後背地は、主に良好な住環境の保護を図る第一種中高層住居専用地域に指定されている。

(ロ) 本件土地周辺の第二種住居地域内で、本件相続時以前10年間において、建築物を建築するために開発許可が必要となる地積500平方メートル以上の土地に係る建築物の建築状況をみると、戸建分譲が行われた例はなく、平成9年に店舗1棟(1階建、地積707平方メートル)、平成11年に共同住宅1棟(2階建、地積557.7平方メートル)、平成12年に事務所1棟(2階建、地積512.85平方メートル)、平成14年に分譲マンション1棟(7階建、地積1,372.15平方メートル)及び平成15年に店舗1棟(2階建、地積1,500.03平方メートル)が建築されている。

特に、上記7階建分譲マンションは、本件土地とS通りを挟んで南側に位置し、規模、形状及び接道状況が本件土地と酷似する土地に建築されたものである。

(ハ) 本件土地は、R駅から約1キロメートル、徒歩約12分の距離に位置するため、交通が極めて利便な土地である。

(3)判断

請求人ら及び原処分庁は、本件土地が本件通達に定める広大地に該当するか否かについて、広大地から除かれるマンション適地等には当たらないとして、上記のとおり、戸建分譲に係る公共公益的施設用地の負担の必要性について主張する。

しかしながら、上記の認定事実等に基づき判断すると、次のとおりである。

イ 本件地域は、幹線道路であるS通りの沿道であることから、規模に制限のない店舗等を許容する第二種住居地域に指定され、その結果、幹線道路の交通量を勘案して、沿道の後背地にある主に第一種中高層住居専用地域の住環境を保護する効果をもたらしている地域であり、また、
②P市プランにおいて、商業・文化機能等を強化した建築物の誘導等を推進する地域にあり、R駅前商業地域に隣接して、極めて交通の便も良く、中高層の集合住宅等のほか大規模な店舗や事務所の建築に適した地域で、
③現に、戸建住宅のほか、アパート、マンション、店舗併用集合住宅などの中高層の集合住宅及び事務所、大規模な店舗などの商業施設が混在し、
④加えて、建築物の建築をするために開発許可が必要となる地積500平方メートル以上の土地に係る建築物の建築状況をみると、集合住宅等や商業施設などが建築されている状況にあり、特に、本件土地とS通りを挟んで南側に位置する本件土地と規模、形状、接道状況が酷似する土地には、7階建ての分譲マンションが建築されていることなどから、本件土地は、社会的・経済的・行政的見地から総合的にみても、マンション適地等に該当するものと認められる。

したがって、本件通達に定める広大地には当たらない。

ロ 請求人らは、本件土地は広大な土地であり、本件土地近隣の標準的な分譲面積である100平方メートルから120平方メートルで別紙2の図1のとおり画地割すると、通り抜け道路が必要となるから、本件通達の定めを適用して評価すべき旨主張し、他方、原処分庁は、本件土地について開発行為を行う場合は、通り抜け道路のような公共公益的施設用地となる地積を生じさせることなく開発許可を受けることができるなどの理由から、本件通達の定めの適用はない旨主張するが、上記イで判断したとおり、本件土地はマンション適地等に該当することから、戸建分譲を前提とした請求人ら及び原処分庁の主張についてはいずれも採用することはできない。

(4) 本件土地の評価額

本件土地は、上記(3)記載のとおり、本件通達の定めの適用はなく、本件土地の評価額を算出すると、その評価額は、別表2の「原処分庁主張額14」欄と同額となる。

※本件土地の価額

①原処分庁主張額 186,588,924円

②請求人ら主張額 102,843,316円

③審判所の価額  186,588,924円

*********************************

コメント

本件においては、請求人ら及び原処分庁共にその地域における最有効使用は戸建住宅分譲であって、宅地分譲する場合に開発道路を設けるか、路地状開発を行うか、二者択一の論理を展開していますが、審判所は、マンション適地であると判断しました。

審判所はその地域を『本件地域は、幹線道路であるS通りの沿道である…現に、戸建住宅の他アパート・マンション、店舗併用集合住宅などの中高層住宅及び事務所・大規模な店舗などの商業施設が混在し…』とし、『本件土地はマンション適地等に該当する』としました。その決め手は、

①本件地域は、幹線道路であるS通りの沿道であること

②本件地域はR駅前商業地域に隣接して、極めて交通の便も良く、アパート・マンション、店舗併用集合住宅などの中高層の集合住宅及び事務所、大規模な店舗などの商業施設が混在すること

③本件土地とS通りを挟んで南側に位置する本件土地と規模・形状・接道状況が酷似する土地には、7階建の分譲マンションが建築されていること

等です。

その地域のとり方をどうとるかによって、大きく結論が異なることを本件事案は証明しているかもしれません。

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/