敷地内に公開道路は不要なので広大地に該当しない
公共公益的施設としての道路を敷設することなく土地を開発することが本件通達に定める「経済的に最も合理的な」開発に該当するので、広大地には該当しないとした事例(仙台・公開 平成21年6月25日裁決)
1.本件各土地の概要
本件甲土地の地積は、3,013㎡の土地で、現況地目は雑種地である。
相続開始日には、本件甲土地は、未利用地である。
本件土地区画整理地内における当該道路沿いは、敷地面積が600㎡以上の店舗等の商業施設が連担し、一方、○○路線の道路(幅員6m)は、生活道路として整備された道路であるところ、当該道路の北側沿いは、本件甲土地を中心として東西約400mにわたり敷地面積が150㎡から300㎡の戸建住宅が連担する住宅地域である。
本件乙土地の地積は、1,719㎡の土地で、現況地目は雑種地である。相続開始日には、本件甲土地は、未利用地である。
本件乙土地は、本件甲土地と同様○○路線及び○○路線に面しており、近隣地域の利用状況は本件甲土地と同様である。
本件丙土地の地積は、1,384㎡の土地で、現況地目は雑種地である。相続開始日には、本件甲土地は、未利用地である。本件甲土地が属する用途地域は、第二種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)である。
近隣地域は戸建住宅及び中層の共同住宅が連担する住宅地域であり、一区画当たりの敷地面積は350㎡から700㎡となっている。
2.争点
本件各土地は、都市計画法に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地として道路が必要と認められるものか否か。
3.原処分庁の主張
(1)本件各土地においても、本件各土地区画整理事業の目的に沿って整備された土地の形状により、上下2面に区分した区画で土地利用を行うのが最も有効であると認められ、別図1及び2のとおり、いずれの土地も路線に面して間口が広くなっていることから、開発行為を行う場合に特に公共公益的施設を設置する必要はないと認められる。
(2)上記(1)のとおり、公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものに該当しないと判断したものであり、単に間口が広いというだけで広大地に該当しないと判断したものではない。
4.請求人の主張
(1)原処分庁は、上下2面の区画での利用が最も有効と主張しながら、上下2面を一体評価している。
このことは、本件各土地の本件相続開始日の現状において、原野に近い「一団の雑種地」であったことから生じているものであり、矛盾している。
(2)平成16年6月29日付の国税庁資産評価企画官情報第2号の広大地に関する説明では、広大地に該当しない例示として間口が広く、奥行がそれほどでもない土地として図解説明していることから、間口が広いだけでは、公共公益的施設を設置する必要はないとするのは間違いである。
5.審判所の判断
イ 広大地通達に定める「経済的に最も合理的な開発」について
広大地通達に定める「経済的に最も合理的な」開発については、①その地域の利用状況に合った宅地の地積に分割されること、②当該分割による開発が、都市計画法等の法令に反していないこと、③容積率及び建ぺい率も経済的に利用されることなどを考慮して判断すべきところ、本件甲土地及び本件乙土地のA路線の道路沿いは、一区画が600㎡以上の店舗等の商業施設の敷地、C路線の道路沿いは、一区画が150㎡から300㎡前後の戸建住宅の敷地としての、また、本件丙土地の近隣地域は、一区画が350㎡から700㎡の戸建住宅や中層の共同住宅の敷地としての利用が、それぞれ本件区画整理地内における経済的に最も合理的であると認めるのが相当である。
ロ 次の本件各土地に、上記の「経済的に最も合理的な」開発を行った場合、公共公益的施設用地の負担が必要かどうかについて検討する。
A 請求人は、戸建住宅分譲用地の開発では公共道路の取付けは必要であると主張し、本件各土地の開発を規定した土地利用計画図と題する資料を当審判所に提出している。
当該資料は、本件各土地について、中央部分に幅員6mの道路を取り付け、本件甲土地は地積が3,013㎡のところ、一区画の地積217.4㎡の12区画で道路敷設地積を404.2㎡、また、本件乙土地は地積が1,719㎡のところ、一区画の地積177.2㎡の8区画で道路敷設地積を301.4㎡、さらに、本件丙土地は地積が1.384㎡のところ、一区画の地積135.3㎡の8区画で道路敷設地積を301.6㎡としたものである。
しかしながら、このような開発は、近隣地域の利用状況に沿ったものであると考えるのは困難であり、また、本件区画整理地内には必ずしも道路を敷設しない開発も認められるところ、本件各土地について、道路を敷設し、殊更に細分化して開発する合理的な理由や必然性は見当たらないことから、請求人の主張する利用方法が経済的に最も合理的であると認めることはできない。
B そこで、当審判所において、上記の経済的に最も合理的であると認められる利用を前提とし、上記に定める1区画の面積及び接道義務の基準、上記の本件各土地の地形並びに本件区画整理地内の近隣地域の利用状況をしんしゃくして開発想定図を作成すると、別図5のとおり、本件各土地については、公共公益的施設として道路を敷設することなく開発することが経済的に最も合理的であると認められる。
(ハ)そうすると、本件各土地の開発を行うとした場合に、公共公益的施設用地として道路が必要と認められないので、本件各土地の評価に当たって広大地通達の適用はできないこととなる。
したがって、請求人の主張には理由がない。
ニ 本件各土地の評価額
以上のとおり、本件各土地の評価において広大地通達の適用を認めることはできず、それ以外の評価基本通達の定めに従って本件各土地の評価額を算出すると、別表1の「原処分類」欄と同額となる。
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コメント
本件各土地の特徴をみると、まず本件甲土地は三方が道路に接面する土地であり、本件乙土地及び本件丙土地は二方が道路に接面する土地です。
この段階で、本件各土地は開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担がほとんど生じないと認められる土地に該当するか否かを考える必要があります。
国税庁は「開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担がほとんど生じないと認められない土地」を列挙していますがそのうちの1つ、「道路が二方、三方又は四方にあり、道路の開設が必要ない場合」に該当するか否かです。
4.(4)道路が二方、三方又は四方にあり、道路の開設が必要ない場合
又、土地区画整理事業は、細街路網の整理、大震災等の復興事業等により区画や道路がきれいに整備され、街並みが整然となるメリットがありますので、土地区画整理事業により区画等を整備した上さらに土地に道路を敷設するとなると本来の土地区画整理事業の流れに反する動きにもなりかねないので慎重にその地域及び本件土地の特性を勘案していく必要があります。
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)