店舗等の敷地としての利用は、広大地には該当しない

2019年6月12日

広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、相続税還付はこれからも活用できます。

広大地とは、「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な土地で、かつ広大地に該当しないとした事例都市計画法に規定する開発行為を行うとした場合には公共公益的施設用地が発生すると認められる土地」のことをいいます。

下記の審判事例① は、本件土地全体を一体として店舗等の敷地として使用することが最有効使用であることから、道路等の公共公益的施設用地の負担は不要であると判断された事例です。

審判事例①(大裁(諸)平20 第62 号・平成21年3 月25日裁決)
(ロ)本件土地における最有効使用の方法及び公共公益的施設用地負担の要否(略)本件土地の向かい側にある○街区(中略)部分の大半が商業施設であることや、(中略)本件土地は○階建のマンションに挟まれており低層の戸建住宅を建設するには不適当であることなどの状況を考慮すると、本件土地における最有効使用の方法は、開発行為等を行って戸建住宅の敷地として利用するのではなく、標準的な使用方法である店舗等の敷地として利用することであると認めるのが相当である。ところで、本件土地内は、(中略)その中央部には約2.6m の段差が存在することから、本件土地につき段差を境として(中略)に面する部分を店舗用地とし、他方をそれ以外の用地として使用することも考えられないではない。

しかしながら、(中略)現に、(中略)本件7箇街区内の低層の店舗等は、その敷地内に存する段差をそのまま利用して駐車場として利用するなどしている上、(中略)本件土地は、段差があることを考慮してもその全体を一体として店舗等の敷地として使用するのが最有効使用であるというべきである。

(中略)

そうすると、本件土地は、これを最有効使用した場合に公共公益的施設用地の負担が必要となる土地ではないと認められるから、広大地には該当しないというべきである。

この審判事例① のポイントは、「その地域」の範囲をどう決めるかにあります。大きくとるか、それとも小さくとるか。利用状況をよく見極めて地域を分析する必要があります。

そのうえで本事例をみると、本件土地の面積は1,227.52㎡で、敷地のほぼ中央部分に道路に平行して約2.6m の段差があります(敷地は二方道路に面しています)。

広大地的には、土地の最有効使用方法とは「その地域」の標準的使用方法であることです。

したがって、土地をどのように活用するかを考えるうえで、「その地域」の分析は欠かすことができません。

たとえば、争いになれば「その地域の戸建住宅○% 、店舗○% 、事務所・工場○% 、マンション○% 、そのうち店舗が大半をしめているので、その地域の標準的使用は店舗です。

したがって、本件土地の最有効使用は店舗です。本件土地の最有効使用が店舗とした場合の敷地の土地利用計画図を検討した場合、公共公益的施設用地の負担が見込まれないので、本件土地は広大地には該当しません」となります。このように、その地域の範囲を決めることや地域の分析はとても大切なことです。

一方、この審判事例② は、その地域の標準的な使用をするに当たり公共公益的施設用地の負担が見込まれないと判断された事例です。

審判事例② (東裁(諸)平24 第76 号・平成24 年10 月15日裁決)

①○○では、○○によって指定する「○○区域」内で建物の建築をする場合、商業・事務系施設の集積を高めるため、少なくとも1階部分について店舗等の設置の協力を依頼していること(中略)、
②現に、戸建住宅や共同住宅に比して、店舗又は店舗併用住宅が多く建築されていることからすると、審判所認定地域では、店舗又は店舗併用住宅が宅地の標準的使用と認めるのが相当である。
ハ 公共公益的施設用地の負担の要否について上記のとおり、審判所認定地域では、店舗又は店舗併用住宅が標準的な宅地の使用と認められることから

(中略)

(ロ)(略)そこで、本件土地に状況が類似する後者の例の規模により、最も小さい544.00㎡規模の区画に割るとしても2区画程度となるから、開発想定図を用いて検討するまでもなく、公共公益的施設用地の負担は見込まれない。

(ハ)以上から、本件土地については、審判所認定地域における標準的な使用をするに当たって、開発行為を要しないか、区画割りをするとしても公共公益的施設用地の負担が見込まれないものと認められる。

二 まとめ

以上のとおり、本件土地は、本件通達に定める広大地には該当しないものである。

審判事例② のポイントは、市の条例で、市長が定める区域内に建築物を建築する場合、1階部分に店舗等の設置協力が定められている点にあります。

この条例があるために、「その地域」の標準的な宅地の使用は店舗または店舗併用住宅となり、公共公益的施設の負担は不要になります。したがって広大地認定は無理というのは、ごく自然な流れです。

本件土地を調査する際、開発指導要綱をチェックすることは必須事項です。

どのような制限・規制があるのかを調べてから、本件土地とその周辺の現地調査をすると、「その地域」の特性がわかってきます。ぜひとも、市役所と現地調査をしましょう。

用語
区域…小売業、卸売業、飲食店舗、金融業、保険業、不動産業、サービス業等の業務を行う施設の集積を図る区域で、規制で定める区域のことです。

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/