本件土地は標準的な宅地の地積と同程度と判断された事例
広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。
本件土地は標準的な宅地の地積と同程度なので、広大地の適用はないとした事例(関東信越・公開、平成28年2月29日裁決)
本件土地の概要
本件土地
本件土地は、幅員約44mの国道(■■バイパス)に接面する地積725.00㎡のおおむね長方形の土地である。本件土地は、駅から約1.5kmに位置する。又、本件相続開始日において、更地である。本件土地の属する用途地域は、準工業地域(建ぺい率60%、容積率200%)である。
争点
本件土地は、広大地に該当するか否か。
原処分庁の主張
イ 広大地該当性について
(イ) 本件土地について
原処分庁主張地域②においては、本件相続の開始時、駐車場付きの店舗3棟、事務所5棟及び戸建住宅等4戸が存していることから、その宅地の標準的使用は、駐車場付きの店舗又は事務所の敷地であり、標準的な宅地の地積は、500平方メートルから2,000平方メートル程度である。
そうすると、本件4土地は、その地積が原処分庁主張地域②における標準的な宅地の地積の上限を超えるものではないから、著しく地積が広大な土地とは認められない。
(ロ) したがって、本件各土地は、いずれも広大地には該当しない。
請求人らの主張
イ 広大地該当性について
(イ) 請求人ら主張地域においては、最近新たに工場として開発された例はなく、むしろ、中小工場の数社がここ10年くらいの間に移転するという状況からすれば、資金面で利用者が限定される工場又はこれに準ずる施設の敷地としての利用が経済的に最も合理的であるとはいえない。
この点に加え、a市における準工業地域の土地利用の現況の大部分が戸建住宅であることを併せ考えれば、請求人ら主張地域における宅地の標準的使用は、戸建住宅の敷地である。
(ロ)請求人ら主張地域において、昭和52年以降現在までに開発された戸建分譲住宅19区画の平均敷地面積は、110.45平方メートルである。
また、本件相続の開始時において、請求人ら主張地域には地価公示の標準地が存在しないものの、a市b町並びにb町に隣接する同市n町及びp町の準工業地域にある地価公示の標準地6地点の平均地積は、約146平方メートルである。
これに請求人ら主張地域における敷地面積の最低限度が100平方メートルであること等を総合勘案すると、請求人ら主張地域における標準的な宅地の地積は、100平方メートルから120平方メートル程度というべきである。
そうすると、本件各土地は、いずれも、請求人ら主張地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な土地に該当する。
(ハ) 請求人ら主張地域における標準的な宅地の地積が上記(イ)のとおりであること並びに本件各土地の形状、公道との接面状況及び地積等を踏まえると、本件各土地の開発行為を行うに当たっては、別図3のとおり、いずれも、道路を開設するのが経済的に最も合理的である。
そうすると、本件各土地は、いずれも、開発行為をするとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要な土地である。
(ニ) したがって、本件各土地は、いずれも広大地に該当する。
審判所の判断
(1)広大地通達への当てはめ
イ 本件土地について
認定した事実に照らせば、本件土地は、b町■丁目■番の街区に所在しているところ、b町■丁目の西側は、幅員約44mの国道h号線(■■バイパス)が南北に走っているとともに、■番の街区の東側及び南側にかけてm川が流れており、これらを境に地域としての一体性が分断されている、また、b町■丁目と市道q号線の北側の地域とでは、行政区域を異にしているということができ、以上の事情を総合勘案すれば、b町■丁目■番の街区(別図2-2の破線で囲まれた地域であり、以下「審判所認定地域②」という。)が本件土地に係る広大地通達にいう「その地域」に当たると認めるのが相当である。
そして、審判所認定地域②に存する土地は主に事業所や店舗の敷地として利用されており、それらの地積は約495平方メートルから約859平方メートルであると認められるところ、これらの事情に照らせば、審判所認定地域②における標準的な宅地の地積は、これらの平均地積である約720平方メートル程度と認めるのが相当である。
そうすると、地積725.00平方メートルの本件土地は、「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地」には当たらないから、広大地に該当しない。
請求人らが主張する開発想定図
コメント
広大地であるためには「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地であること」が要件となります。しかしこの「標準的な宅地」の求め方については財産評価基本通達には明記されていません。
本件では、その地域の標準的な宅地の地積は、その地域の主たる利用の事業所・店舗の敷地の地積の平均値をもってその地域の標準的な宅地の地積とし、その地積と本件土地との比較において著しく広大であるか否かを決めています。
本件裁決では、
『審判所認定地域②に存する土地は主に事業所や店舗の敷地として利用されており、それらの地積は約495平方メートルから約859平方メートルであると認められるところ、これらの事情に照らせば、審判所認定地域②における標準的な宅地の地積は、これらの平均地積である約720平方メートル程度と認めるのが相当である。
そうすると、地積725.00平方メートルの本件土地は、「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地」には当たらないから、広大地に該当しない。』(本件裁決事例より)としました。
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)