無償返還届出書が提出されている土地は、自用地の価額の100分の80として評価すべきとした事例

請求人の主張
本件土地の地代の年額 3,360,000円は、本件土地の自用地としての価額の約2.4%であり、 通常の地代といえるから、本件土地の本件法人への貸付けによる評価は、本件通達8 によらず評価通達 25 によることとなり、 借地権の価額である自用地としての価額の70%を控除して評価すべきである。
原処分庁の主張
本件土地の価額は、本件通達8の定めに基づき評価すべきである。本件では、本件法人への本件土地の貸付けについて、本件被相続人から無償返還届出書が提出されていることから、本件の価額は、自用地としての価額の100分の80として評価することになる。
審判所の判断
貸地の評価において、 評価基本通達 25 のように借地権価額を控除するのは、その場合の地上権設定又は賃借権設定により、当該土地の自用地としての価額のうち借地権部分に相当する経済的価値が地主から借地人に対して移転し、借地人が経済的に相当の価値を有する借地権を取得したとみるべき経済的実態が存在するからである。
権利金の授受がなく、相当の地代の支払もしないとして無償返還届出書が提出された場合における経済的実態は、そもそも地主から借地人に対して借地権部分に相当する経済的価値が移転していないため、貸地であってもその収益力がすべて地主に帰属し、自用地と異なることがないという特殊な借地関係が存在するというものであり、地主にとって自用地同然の経済的価値が保持されているものといえる。
したがって、無償返還届出書が提出された場合の貸地の評価については、地主の下に借地権部分に相当する経済的価値が残存しており、貸地であっても自用地同然の収益力を有し、経済的価値が保持されているものとみるのが経済的実態に通常合致するものである。
よって、 課税関係にこれを反映することには合理性がある。
無償返還届出書の提出があった場合は、自用地としての価額から控除すべき借地権の価額が認められる経済的実態は存在しないから、 評価基本通達 25 の評価方法によるべきではないが、 権利金の授受の慣行のない地域においても自用地としての価額か2割を減ずる評価が行われていることとのバランスを取り、また、事実上自用地に比べて利用面で多少の不便があることを考慮すると、自用地としての価額から幾らか割り引いて評価することにも理由があるので、本件通達8によって自用地としての価額から当該価額の2割を控除して評価することには、合理性がある。
したがって、本件届出書が提出されている本件各土地については、本件通達8による評価をするべきである。
一方、無償返還届出書が提出されている場合は、 そもそも自用地としての価額から控除するべき借地権の価額は存しないので、本件通達7の計算によって借地権の価額を控除する意味がないことから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
本件土地の価額は、 自用地としての価額を評価基本通達の定めに基づく評価方法を採用して評価した上で、本件通達8の定めにより、その100分の80に相当する金額によって評価することとなる。
関係法令
※ 本件通達8
この通達は、借地権が設定されている土地について、 無償返還届出書が提出されている 場合の当該土地に係る貸宅地の価額は、当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額によって評価する旨定めている。
コメント
相当地代通達8は、土地の貸借当事者の積極的意思表明に従って判断された借地関係の経済的実態に、権利金の授受の慣行のない地域における評価とのバランス及び自用地と比較した事実上の不便を考慮して評価する合理的な取り扱いと認められ、また、相続が包括承継であって相続開始前の経済的実態を変更するものではないことから請求人の主張には理由がなく、本件土地の価額は相当地代通達8の定めによって評価するのが相当である、と審判所は判断した。
被相続人所有の土地に同族法人が建物を建て事業の用に供していた事案で、権利金、地代の授受がなく相続開始日において無償返還届出書の提出のない土地は、 借地権が同族法人に帰属するという判定がされました。 (H9.2.17 裁決事例)











