賃料減額請求に対する最高裁の判例

2019年6月5日

上向き赤矢印・下向き青矢印

借地借家法32条1項の規定は、強行法規であり、賃料自動改定特約等の特約によってその適用を排除することはできないものである。

そして、同項の規定に基づく賃料減額請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たっては、同項所定の諸事情(租税等の負担の増減、土地建物価格の変動その他の経済事情の変動、近傍同種の建物の賃料相場)のほか、賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきである。

前記事実関係によれば、本件建物は、上告人の要望に沿って建築され、これを大型スーパーストアの店舗以外の用途に転用することが困難であるというのであって、本件賃貸借契約においては、被上告人が将来にわたり安定した賃料収入を得ること等を目的として本件特約が付され、このような事情も考慮されて賃料額が定められたものであることがうかがわれる。

しかしながら、本件賃貸借契約が締結された経緯や賃料額が決定された経緯が上記のようなものであったとしても、本件賃貸借契約の基本的な内容は、被上告人が上告人に対して本件建物を使用収益させ、上告人が被上告人に対してその対価として賃料を支払うというもので、通常の建物賃貸借契約と異なるものではない。

したがって、本件賃貸借契約について賃料減額請求の当否を判断するに当たっては、前記のとおり諸般の事情を総合的に考慮すべきであり、賃借人の経営状態など特定の要素を基にした上で、当初の合意賃料を維持することが公平を失し信義に反するというような特段の事情があるか否かをみるなどの独自の基準を設けて、これを判断することは許されないものというべきである。

原審は、上記特段の事情の有無で賃料減額請求の当否を判断すべきものとし、専ら公租公課の上昇及び上告人の経営状態のみを参酌し、土地建物の価格等の変動、近傍同種の建物の賃料相場等賃料減額請求の当否の判断に際して総合考慮すべき他の重要な事情を参酌しないまま、上記特段の事情が認められないとして賃料減額請求権の行使を否定したものであって、その判断は借地借家法32条1項の解釈適用を誤ったものというべきである。

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