無道路地としての斟酌(しんしゃく)
【事例】A28 H24.5.30
請求人は、甲土地(無道路地)の奥行距離が本件道路から150mであるにもかかわらず、財産評価基本通達15が定める奥行価格補正率(奥行距離100m以上の場合最大0.8)を適用することは不合理なので、・・・甲土地の評価では奥行価格補正率を0.6とすべきである旨主張するが、甲土地を路線価と同通達に定める各種補正率を適用することには、特に不都合と認められる特段の事情は認められない。よって、同通達20-2に基づき①奥行価格補正②不整形地補正③無道路地としての斟酌(道路開設費用相当額の計算)を行って評価することが相当である。
大裁(諸)平15-94
平成16.6.8裁決
1.事実
(1)事案の概要
本件は、相続により取得した農地について・・・当該農地に係る評価額の減額が求められた事案であり、争点は相続税の課税価格に算入する農地の価額の多寡である。
(2)基礎事実
○○○の畑(以下甲土地という)は、市街化区域内の畑で普通住宅地区内に所在しており、財産評価基準書によれば路線価方式により評価する土地であることについては、請求人と原処分庁の間に争いはない。
1.判断
(1)本件土地の相続税の課税価格に算入する価額
イ.甲土地について
(イ)認定事実
A.甲土地は、里道(○○所有の道路をいい、以下本件里道という)に面する土地である。
路線価には面しておらず、本件甲道路から本件里道沿いに続く竹林を西方向に約150m入った地点に位置し、無道路地として評価すべき土地である。
なお、本件里道は、幅員約1.5mないし2mで傾斜角度約6度の緩やかな坂道である。
B.甲土地は、地積○○で本件甲道路との高低差約15mの小高い丘の中腹に位置する。
又、本件里道から北東方向に最深部で約4.2m下がった傾斜角度約13度を有する雑草が繁茂する土地である。
C.甲土地の評価に当たり、評価通達に基づき適用する不整形地補正率は0.6、無道路地としての斟酌(通路開設費用相当額)は、不整形補正後の価額の100分の40である。
(ロ)利用価値の著しい低下の有無
請求人は・・・甲土地は、市街化区域内の畑で普通住宅地区内に所在し、本件甲道路から徐々に公売を登本件里道に面するなど、その付近の土地と類似した状況にある。
そして、付近の土地とは、本件甲道路付近の土地までも含むものと考えられるが、甲土地は評価通達40(市街化農地の評価)の定めにより評価する土地であるから、その価額は、奥行価格補正及び不整形地補正の適用により、また無道路地としての斟酌により減価され、宅地に転用するための造成費用相当額を控除した価額と解するのが相当である。
そうすると、甲土地は本件甲道路と約15mの高低差があるとしても直接面する土地ではなく、その付近の土地と類似した状況にあることから、宅地造成費用を透過してもなお宅地としての利用価値が著しく低下するものとは認められない。
(ハ)宅地造成費相当額
・・・財産評価基準書において、土地を宅地に転用するための宅地造成費相当額の算定は、傾斜地、平坦地の区分に従って行うこととされている。その際、傾斜地であるか否かは、対象となる甲土地に傾斜があるか否かにより判断すべきである。
甲土地は・・・高低差約4.2m、その傾斜度は約13度であるから、傾斜地と判断すべきである。
したがって、甲土地を宅地開発する場合に通常必要と認められる1㎡当たりの宅地造成費は、評価通達40の定めより・・・財産評価基準書の金額である。傾斜角度20度超から15度以下の金額14,000円を適用するのが相当である。
(ニ)甲土地の評価額の算定
上記より甲土地の相続税の課税価格に算入する価額は、宅地比準方式により算定すると、○○となる。
関連リンク:相続税法上の時価鑑定(https://erea-office.com/appraisal/fair_valuation/)
以上