相続税対策の養子「有効」、縁組意思否定できず、最高裁初判断!!

2019年4月26日

「裁判所」と書かれた石の看板相続税対策として孫と結んだ養子縁組が有効か否かで争いになった事例がありましたので、新聞記事を掲載することにしました。

***

相続税対策で孫と結んだ養子縁組が有効かどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(木内道祥裁判長)は1月31日、「節税目的の養子縁組でもただちに無効とはいえない」との初判断を示した。相続税対策で縁組が広がりつつある現状を追認した形で、縁組が無効となるのは当事者に縁組の意思がない場合などに限られそうだ。

有効性が争われたのは2013年に82歳で亡くなった福島県の男性と孫との養子縁組。男性は亡くなる前年、長男の息子で当時1歳だった孫と縁組をした。男性の法定相続人は長男と娘2日の3人だったが、孫との縁組が有効なら4人となる。男性の死後、娘2人が「縁組は無効」と提訴していた。

相続税額は遺産全体から一定額を差し引いたうえで算出される。この控除分は3千万円が基本で、相続人1人につき600万円を加算。実子がいても養子は1人まで、実子がいなければ2人まで相続人に含められる。

相続人が多いほど控除額が増えて税金が減るため、資産が多い場合に節税目的で養子縁組をするケースが少なくない。

今回の訴訟では男性に縁組の意思があったかどうかが争点となった。

一審・東京家裁は、男性本人が縁組届を作成したとして有効と認定。二審・東京高裁は「税理士が進めた相続税対策にすぎず、男性は孫との間に真実の親子関係を創設する意思はなかった」として無効と判断。孫側が上告した。

最高裁の第3小法廷は「節税の動機と縁組の意思は共存し得る」と指摘。縁組の意思があれば節税目的の養子縁組を認める初の判断を示したうえで、「男性に縁組の意思がないとはいえない」として孫との縁組は有効と結論づけた。

最高裁が初判断を示したことで、節税目的であっても当事者の意思が確認されれば、養子縁組が無効になる余地はほぼなくなった。ただ、相続税法は「相続税の負担を不当に減少させる結果となる場合は、税務署長の判断で養子を参入せずに税額を計算することができる」と定める。国税庁は、「個々の事例に応じて判断する」としている。

2017.2.1 日本経済新聞