借地権の及ぶ範囲は建物の敷地に限定されず、パチンコ店の敷地全部に及ぶとした事例
【争点】
相続した土地に借地権が存在するか否か
【請求人の主張】
原処分庁は、本件土地の賃貸借契約は建物の所有を目的とするものではなく駐車場としての使用が目的であり、借地権の目的となっている土地として評価することはできないとしているが、本件相続開始日において本件第二土地には本件建物の一部が存在しており事実を誤認している。
【原処分庁の主張】
本件土地は、昭和40年代から昭和50年代の初めのころに、被相続人がAに対し、ドライブインの駐車場用地として口頭により賃貸を開始したものであり、当該賃貸借契約は建物所有を目的とするものではない。
本件土地は、建物所有を目的とする賃貸借契約が存するとは認められないことから、借地権の目的となっている土地としての評価をすることはできない。
【国税不服審判所の判断】
本件土地は、本件建物の敷地及び駐車場として利用されており、本件建物の増築により本件第二土地は敷地の一部となり、本件相続開始日現在もその状況が継続していると認められる。
そうすると、本件土地の賃貸借の主たる目的は、パチンコ店などの経営に必要な本件建物を所有する目的にあるといえる。
また、本件相続開始日現在において、本件土地の大部分はパチンコ店に来店する客に駐車場として利用されているものの、本件建物の一部は本件土地上に現に存していること、及び本件建物と駐車場は一体として利用されていることから、 借地権の及ぶ範囲は、必ずしも建物の敷地に限られるものではなく、パチンコ店として利用されている土地全体に及ぶものと認めるのが相当である。
したがって、本件土地は、財産評価通達に定める借地権の目的となっている宅地と認められる。
これに対し、原処分庁は、上記のとおり主張し、 借地権の存在を否定するが、その主張する根拠ないし理由はいずれも借地権の存在を否定するに足りるものではない。
以上のとおり、原処分庁の主張はいずれも採用できず、本件土地の価額の算定に当たり、請求人が、財産評価通達 25 を適用し貸宅地として評価したことは相当と認められるので、本件更正処分はその全部を取り消すべきである。
【コメント】
請求人は、本件土地は、建物所有を目的とする賃貸借契約が成立しているので、借地権は存在すると主張する。
原処分庁は、当該賃貸借契約は建物所有を目的とするものではないので、本件土地は借地権の目的となっている土地として評価できないと主張する。
審判所は、
①本件土地上に建物が現存していること、
②本件建物と駐車場は一体として利用されているので、本件土地には借地権が存在すると認められると、判断した。
審判所が本件土地には借地権が存在すると判断するにあたり、本件土地及び隣接地は、
① 三路線に面しており、これらの路線のいずれからも出入りが可能であり、
②本件建物の敷地及び駐車場として利用されており、
③本件建物の増築により本件第二土地は敷地の一部となり、本件相続開始日現在もその状況が継続していると認められる。
そうすると、本件土地の賃貸借の主たる目的は、 パチンコ店などの経営に必要な本件建物を所有する目的にあると言える、と審判所は判断した。
本件におけるポイントは、本件土地上に建物が存し、建物と隣接する駐車場が一体として 利用されており、なおかつ相続開始日もその状況が続いていることが上げられる。敷地の一部にしか建物が存しなくても、土地全体をみて判断することの大切さを感じる事例です。