広大地判定で道路開設が必要か(裁決事例4)

2019年6月11日

1.あらまし

評価対象地は、道路を開設するなどした開発行為を行うことが最も合理的であり、広大地として評価するのが相当であるとした事例です。

平成23年5月9日裁決

2.審判所の判断

イ.「標準的な宅地の地積」について

本件地域は、上記のとおり、本件地域において確認できた戸建住宅敷地として開発された58区画の宅地の平均面積は111.61㎡であること及びその面積が90㎡以上120㎡未満のものが34区画と全区画数の58.6%を占めていること等から総合的に判断すると、本件地域において本件通達に定める「標準的な宅地の地積」は、90㎡ないし120㎡未満であると認めるのが相当である。

なお、原処分庁は、本件土地が所在する地域における開発事例のうち、一部の区画のみの面積に基づき標準的な宅地の地積を判定する等、標準的な宅地の判断基準となる開発事例の選択が合理的ではないから、原処分庁の主張は採用できない。

ロ.上記のとおり、本件通達の「その地域」における標準的な宅地の地積は、90㎡ないし120㎡未満であるから、本件土地はこれに比し著しく地積が広大な土地に当たる。

ハ.本件通達に定める「公共公益的施設用地」の負担の要否について

  • 本件地域における本件通達に定める「標準的な宅地の地積」は、上記のとおり、90㎡ないし120㎡未満であると認められ、当該地積に基づいて本件土地を開発した場合、宅地の区画として4区画又は5区画の開発が想定される。
  • また、本件地域における近年の開発状況等を見ると、上記のとおり、本件地域においては、道路を開発した開発事例が路地状開発の事例より多く、その開発は、面積が約500㎡ないし約1,800㎡の土地で行われており、宅地の区画数は4区画ないし11区画であり、本件隣接地の開発も含まれている。
  • 一方、本件地域においては、路地状開発による事例もみられるものの、当該事例は、比較的小規模な面積で間口距離に比し奥行距離が長大な細長い形状の土地や、土地の形状や公道との接続状況及び面積から見て路地状開発によらざるを得ない、道路の開設による開発がもとより困難な土地の事例であり、本件土地は上記各事例とは条件を異にする。
    そして、本件地域における路地状開発は土地の面積が約280㎡ないし約400㎡程度の比較的小規模な土地においてのみ行われ、開発による区画数も路地状敷地の区画を含めて2区画ないし3区画にとどまっているところ、本件土地と地積が同規模又はそれ以上の土地で、土地の形状や公道との接続状況が本件土地と類似する土地での原処分庁が主張するような路地状開発の事例は見受けられない。
  • 上記に述べた本件地域における近年の土地の開発状況など並びに上記に述べた本件土地の形状、公道との接続状況及び面積からすれば、本件土地は、別紙の「請求人が主張する開発想定図(その2)」のように、道路を開設して開発するのが経済的に最も合理的な開発であると認められる。
    したがって、本件土地は開発行為をするとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要な土地と解すべきである。

ニ 以上によれば、本件土地は、本件通達の「その地域」における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な土地に当たり、公共公益的施設用地の負担が必要と認められることから、本件土地は本件通達に定める広大地として評価するのが相当である。

190408広大地 開発想定図

190408広大地 開発想定図d2

《裁決要旨》

原処分庁は、本件土地が属する財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(本件通達)に定める「その地域」(本件地域)の標準的な宅地の地積に基づき区画割をすると、本件土地は4区画に分割して路地状開発することが可能であること、路地状開発を行うとした場合は、路地状部分の土地は、通路に限らず駐車場として利用でき、建ぺい率・容積率の算定上道路を開設するよりも有利な点があること、また、本件地域に路地状開発の事例もあることから、路地状開発による開発が経済的に最も合理的な開発であるとして、本件土地は本件通達に定める広大地に当たらない旨主張する。

しかしながら、原処分庁の主張する本件地域の標準的な宅地の地積の算定は誤っており、正しい地積に基づき区画割をすると本件土地は4区画又は5区画に分割して開発するのが経済的に合理的であると認められる。また、本件地域においては、路地状開発による事例もみられるものの、当該事例は道路の開設による開発がもとより困難な土地の事例であり、本件土地とは条件を異にする。

他方、本件地域において本件土地と地積、形状及び公道との接続状況及び面積等並びに本件地域における近年の土地の開発状況等からすれば、本件土地については、道路を開設して戸建住宅の敷地として分譲開発するのが経済的に最も合理的な開発方法であると認められる。

したがって、本件土地は、本件通達に定める広大地として評価するのが相当である。

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/