マンション適地か否か(裁決事例3)

2019年6月12日

平成23年9月5日裁決

《裁決要旨》

請求人は、

①本件土地は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく広大で、本件における経済的に最も合理的な開発行為である戸建分譲開発を行うとした場合には、公共公益的施設用地の負担が必要であること、
②路線価方式による土地の評価は、更地として評価することを前提としており、公共公益的施設用地の負担の要否は、開発行為を行うとした場合に負担を要するか否かで判断すべきであり、本件土地の現状が賃貸マンションの敷地の用に供されていることのみをもって、財産評価基本通達24-4《広大地の評価》(広大地通達)の定めの適用を排除すべきではないことから、本件土地は、同通達に定める広大地に該当する旨主張する。

しかしながら、既に開発行為を了しているマンションなどの敷地用地や評価時点において宅地として有効利用されている建築物の敷地用地については、標準的な地積に比して著しく広大であっても、特段の事情のない限り、広大地通達に定める広大地に該当しないと解されるところ、本件土地の場合、開発行為を了した上、共同住宅の敷地として使用されており、近い将来において新たな開発行為を行うべき事情も認められず、本件土地の属する地域(本件地域)は、戸建住宅と共同住宅の混在する地域であって、これらの用途のいずれもが本件地域における標準的な利用形態と認められることからすれば、本件土地は、その周辺地域の標準的な利用状況に照らしても、共同住宅用地として有効に利用されていると認められる。

したがって、本件土地について開発行為を行うとした場合における公共公益的施設用地の負担の要否について検討するまでもなく、本件土地は広大地通達にいう広大地には該当しない。

1.あらまし

請求人は贈与により取得した土地は広大地に該当するとして更正の請求をしたが、本件土地は開発行為を了した上、共同住宅の敷地として使用されており、近い将来に新たな開発行為を行うべき事情も認められず、本件地域の標準的使用からしても有効利用されていることから広大地には当たらないとした事例です。

2.土地の概要

本件土地は948.67㎡、H電鉄J駅から徒歩約12分、本件土地の西側幅員6.1m市道(市道L線)、市道L線は都市計画道路の指定(西側へ拡張し、幅員8mの予定)、第1種低層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率150%)に存する。

本件土地上に共同住宅あり、鉄筋コンクリート造アルミニューム板葺3階建床面積766.34㎡(以下本件建物という)。平成4年7月1日付で所有者保存登記。

3.本件建物の概要

平成4年建築の鉄筋コンクリート造アルミニューム板葺3階建建物であり、本件建物の耐用年数は・・・47年であるところ、外観上建築後の経年によることを越える損傷は存しない。
総戸数14戸のうち12戸の賃貸が可能である。

4.審判所の判断

  •  本件土地の利用状況・・・本件土地は、平成4年3月18日ころ新築された鉄筋コンクリート造アルミニューム板葺3階建の本件建物及び本件建物入居者専用の駐車場として一体利用されている。
    又本件建物は賃貸可能な12戸中11戸又は12戸という高い入居者率を実現している。
    そして本件建物の耐用年数は、法定耐用年数47年であり著しく老朽化又は損傷しているという事実も認められず、今後相当の期間利用することができるものと見込まれる。
    以上のとおり、本件土地は、開発行為を了した上で、共同住宅の敷地として使用されており、近い将来において新たな開発行為を行うべき事情も認められない。
  • 本件西側地域における宅地の利用状況
    本件贈与の日を含む平成10年以降に本件西側地域内で新築された建物は共同住宅のみであることからすると、本件西側地域は戸建住宅と共同住宅が混在する地域であると認められるので、これらの用途のいずれもが本件西側地域の宅地の標準的な利用形態であると認められるのが相当である。
    そうすると、本件土地は標準的な利用形態である共同住宅用地として、すでに利用されている。
    即ち、共同住宅用地として有効に利用されているということができる。

5.小括

本件土地は、その地積が、本件公示地の地積約426㎡及び○○市の開発許可を要する面積基準500㎡を上回っているものの、既に開発行為を了した共同住宅の敷地として、その周辺の標準的な使用状況に照らしても有効に利用されていると認められるので、・・・広大地には該当しないものと認めるのが相当である。

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コメント

※本件土地は第一種低層住居専用地域(容積率150%)内に存するも、実効容積率は80.78%(766.34㎡/948.67㎡)しか活用していない物件です。
法廷容積率150%です。本来ならば第一種低層住居専用地域とはいえ、共同住宅として家賃収入を最大限に確保しようとすれば、最大限の建物を建てて家賃を得ようと努めるものですが、本件においては法定容積率の53.85%(80.78%÷150%)しか活用していないのに、上記小括のように「・・・有効に利用されている」とするのは、甚だ疑問と思われます。又、裁決事例では「なお、本件西側地域に存する宅地の用途別の面積の割合は、戸建住宅用地が66.96%、共同住宅(3階建以下)用地が24.94%、共同住宅(4階建以上)用地が8.10%である。本件西側地域は、戸建住宅と共同住宅が混在する地域であると認められ、これらの用途のいずれもが本件西側地域における宅地の標準的な利用形態であると認めるのが相当である。

そうすると、本件土地は、標準的な利用形態である共同住宅用地として既に利用されていることになり、周囲の状況に比して特殊な形態として利用されているものとはいえない。

すなわち、本件土地は、その周辺地域の標準的な利用状況に照らしても、共同住宅用地として有効に利用されているということができる。」とあります。

共同住宅が本件土地の有効利用であると決めた理由に問題があると思われます。
共同住宅(3階建以下)用地の中に2階建の共同住宅も多く存在している可能性が否定できません。

中高層マンションとは国税庁の説明によれば3階以上のものをいうとあります。
したがって、2階建の共同住宅は対象外となります。かかる点や建物の築年状況を分析すれば、この地域の標準的使用は戸建住宅であり、かつ、開発事例等を検討すれば、その地域の標準的画地の面積はその地域の開発に当たり最低区画面積(たとえば100㎡以上)になるので、評価対象地は100㎡に対して著しく広大であると考えられます。

従って、それを基準に最有効使用の宅地分譲を想定した結果、開発道路等の公共公益的施設用地の負担は生じるものと判定され、かかる点を総合的に判断した結果、対象不動産は国税庁財産評価基本通達24-4の広大地に該当するものと思われます、という結論も可能であったかもしれません。

 

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/