評価通達の定めにより難い特別な事情がある場合の評価方法

2019年6月12日

評価通達の定めにより難い特別な事情がある場合の評価方法本来、財産は財産評価基本通達に定められた評価方式によって評価すべきですが、財産評価基本通達による評価方式を採用することで、逆に実質的な租税負担が不平等になってしまうことがあります。
そのような特別な事情がある場合には、他の合理的な評価方式によって評価します。

その代表的な事例が、次の審判事例です。この審判事例は、広大地の評価を適用しても時価を上回ってしまいます。
そこで、時価を反映しない場合は、他の合理的な評価方法、たとえば鑑定評価により評価してもよいとされました。

審判事例(平成25 年5 月28日裁決 関信)

上記(1)のとおり、評価通達に定められた評価方法により算定される価額が時価を上回る場合には、評価通達の定めにより難い特別な事情がある場合に該当するといえ、その場合には、評価通達の定めによらず、他の合理的な評価方法により評価することが許されると解されるところ、本件土地につき、広大地通達を適用して算定される価額(150,452,114円)は、本件土地の本件相続開始時における価額(時価)である審判所鑑定評価額(69,300,000円)を上回ることから、本件土地の評価額を評価するに当たっては、評価通達の定めにより難い特別な事情があると認められ、本件土地の評価額は審判所鑑定評価額とするのが相当である。

この審判事例の評価額を整理すると、以下のようになります。

通達による価格(広大地適用):1億5,045万2,114円

請求人鑑定の価格:6,000万円

審判所鑑定の価格:6,930万円

この審判事例は、広大地評価をして時価を算出しても、その時価は必ずしも適正な時価を表さない場合、すなわち市場価値を反映していることがあることを物語っています。
個別性の強い土地の場合は、このような場合があるので、注意が必要です。

本審判事例が仮に評価通達による評価額のままだった場合、遺産分割で手に入れた相続人が物件を売却しようとしても、6,000万円でしか売却できない可能性があります。
このような事態が想定されることを考えると、再考が必要だと思います。

 

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/