すり鉢状の土地で側面が崖地でも、広大地可能!

2019年6月12日

広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。

 

本件B土地のうち宅地部分は、すり鉢状の土地で側面が崖地であるが、広大地として評価すべきであるとした事例(福裁(諸)平23第3号 平成23年9月5日裁決)広大地に該当するとした事例の画像

本件B土地の概要

登記簿による面積は、1,640.38㎡ですが、地積測量図による本件B土地の面積は、1,984.57㎡である。
上記土地のうち、宅地の地積1,070.24㎡山林の面積914.33㎡である。

②本件B土地の属する地域は、第1種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率150%)である。
近隣の宅地も主に戸建住宅の敷地として使用されている。

③敷地の北側から北西側の側面は、山林で隣接する南側から東側にかけての土地との境界には、コンクリートのような壁、石垣あり、被相続人及び請求人等が長年居住の用に供している宅地である。

④本件B土地の山林部分の現況は、宅地部分との高低差が約8mの急傾斜であるとともに
隣接する土地の高いよう壁に囲まれていることなどから宅地への転用は困難である。

争点

本件B土地の価格は相当か否か。

原処分庁の主張

本件B土地の価額は、次のとおり評価通達に定められた方法により評価しており、相当である。

(イ)本件B土地について

A 宅地部分の評価について

本件B土地のうち、固定資産税の評価における地目が宅地とされている部分の地積は1,070.24㎡であることから、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大で開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められる。したがって、評価通達24-4に定められる評価方法に基づき広大地として評価すべきである。

C 山林部分の評価について

本件B土地は、宅地と山林に区分され、宅地部分の地積は1,070.24㎡であることから、山林部分の地積は残りの914.33㎡であるところ、当該山林は市街地山林であるため評価通達49の定めにより評価することとなるが、宅地への転用が見込めない急傾斜地等であると認められることから、本件B土地の近隣である■■■の純山林の価額に比準して評価した。

請求人の主張

本件B土地の価額を評価するに当たり、原処分庁は評価通達の適用を誤っていることから、次のとおりとすべきである。

(ロ)本件B土地について

A 全体の地積について

本件申告書に添付した本件参考図は、隣接する私有地の境界点がないため妥当ではないことから、本件B土地の地積は、公簿面積のとおり1,640.38㎡である。

B 宅地部分の評価について

本件B土地は、すり鉢状の土地で側面ががけ地であることから開発もできない土地であるにもかかわらず、マイナス要素が考慮されていない。

C 山林部分の評価について

本件B土地のうち、山林は市街地山林であるため、宅地比準方式により評価すべきである。

審判所の判断

A 全体の地積について

(A)認定事実

本件参考図は、当審判所に対する請求人の答述によれば、請求人が平成13年ころに本件B土地の一部の売却を検討していたことから、地積の確認のために実際に測量を実施し、その結果、本件B土地全体の地積は1,984.57㎡であった。

B 宅地部分の評価について

(A)宅地部分の地積

a 認定事実

原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

(a)本件B土地を構成する7筆の土地のそれぞれの地目は、別表3の「固定資産税の課税明細」の「地目」欄のとおり宅地又は山林であり、宅地部分の本件相続開始日における使用状況は、被相続人の自宅の敷地及び庭園として使用しているほか、一部を■■■の自宅の敷地として使用貸借の用に供している。

(b)■■■の土地については、本件相続開始日から審査請求日までの間にその用途、形状等を変更した事実は認められないことから、本件相続開始日における宅地の地積は、367.59㎡であると認められる。

 

b 本件への当てはめ

宅地部分の地積について判断すると、上記aのことから、本件B土地のうち宅地部分の実際の面積は、別表3の「固定資産税の課税明細」の「地積」欄のとおり、■■■の5.26㎡、■■■の36.27㎡、■■■の529.46㎡、■■■のうち宅地部分である367.59㎡、■■■の131.66㎡の合計1,070.24㎡であると認められる。

(A)広大地評価について

a 認定事実

原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

(a)本件B土地は、市街化区域内にある第1種中高層住居専用地域で建ぺい率60%、容積率150%に規制されている土地であり、近隣の宅地も主に戸建住宅の敷地として使用されている。

(b)本件B土地は、敷地の北側から北西側にかけて側面が山林であるものの、隣接する南側から東側にかけての土地との境界にはコンクリートのよう壁や石垣があり、被相続人及び請求人並びに■■■が長年居住の用に供している宅地である。

c 本件への当てはめ

宅地部分の評価について判断すると、次のとおりである。

(a)本件B土地の宅地部分の地積は、上記のとおり1,070.24㎡であるため、開発行為を行うに当たってあらかじめ開発許可の申請が必要であることから、本件B土地がある地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地であると認められる。

そして、本件B土地は、上記の建ぺい率及び容積率からマンション等の敷地として使用することが困難であると認められることから、広大地として評価することが客観的な最有効使用を前提とした時価の算定方法として合理的であると認められる。

(b)また、本件B土地の宅地の評価に当たり、評価通達15及び20《不整形地の評価》の定めを用いて評価した価額より広大地として評価した価額が下回ることから、広大地として評価することが客観的な最有効使用を前提とした時価の算定方法として合理的であると認められる。

(c)以上のことから、本件B土地の宅地部分の価額について、広大地として評価した原処分庁の評価額は相当と認められる。

d 請求人の主張について

請求人は、本件B土地は、すり鉢状の土地で側面ががけ地であることから開発もできない土地であるにもかかわらず、マイナス要素が考慮されていない旨主張する。

この請求人の主張は、本件B土地が開発もできず宅地として利用するには適さないというマイナス要素を考慮すべきである旨の主張であるが、本件B土地の宅地部分については、上記のとおり広大地として評価することによって不整形地としての評価減の要因を考慮した評価額より低額となっている。
また、上記のとおり長年居住の用に供されているのであるから、開発行為を行うことは可能であると認められる。
そして、請求人は、マイナス要素の具体的な内容や評価額を減額する具体的計算根拠等を示していない。

したがって、請求人の主張は採用できない。

C 山林部分の評価について

(A)認定事実

原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。

a 本件B土地の山林部分の現況は、宅地部分との高低差が約8mの急斜面であるとともに隣接する土地の高いよう壁に囲まれていることなどから、宅地への転用は困難である。

b 本件B土地に最も近い純山林は、■■■■の純山林である。

(B)本件への当てはめ

山林部分の評価について判断すると、次のとおりである。

a 本件B土地の全体の地積は上記のとおり本件参考図の地積である1,984.57㎡であるところ、本件B土地の宅地部分の地積は上記のとおり1,070.24㎡であることから、差し引くことにより合理的に算出できる本件B土地の山林は市街地山林であり、その評価に当たっては評価通達49の定めにより評価することとなる。

c そして、本件B土地の山林部分は、市街地山林について宅地への転用が見込めないと認められる部分に該当するため、本件B土地の山林部分を評価するに当たっては、近隣の純山林の価額に比準して評価することが相当である。

d 以上のことから、本件B土地の山林部分の価額について、■■■■の純山林の価額に比準して評価した原処分庁の評価額は相当と認められる。

D 本件B土地の相続税評価額について

上記AないしCに基づき、本件b土地の相続税評価額を算定すると、別表2の2の原処分庁主張額と同額となる。

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コメント

本来、財産は財産評価基本通達に定められた評価方式によって評価すべきですが、価額が時価を反映していない場合には、他の合理的な評価方法、たとえば鑑定評価により評価してもよいとされています。

請求人は本件宅地の評価について「本件B土地は、すり鉢状の土地で側面ががけ地であることから開発もできない土地であるにもかかわらず、マイナス要素が考慮されていない」と主張していますが、審判所は請求人の主張について、

『この請求人の主張は、本件B土地が開発もできず宅地として利用するには適さないというマイナス要素を考慮すべきである旨の主張であるが、本件B土地の宅地部分については、上記のとおり広大地として評価することによって不整形地としての評価減の要因を考慮した評価額より低額となっている。
また、上記のとおり長年居住の用に供されているのであるから、開発行為を行うことは可能であると認められる。
そして、請求人は、マイナス要素の具体的な内容や評価額を減額する具体的な計算根拠等を示していない。したがって、請求人の主張は採用できない。』と述べています。

この裁決書を見る限り、請求人の主張する価格や計算根拠等が出てきておりませんので何とも言えませんが、計算根拠等を示して頂きたかったと思います。

また、「長年居住の用に供されているのであるから、開発行為を行うことは可能であると認められる」とありますが、本件宅地部分に住宅一戸を既存の平坦部分に建築するだけならば開発許可はいらない場合が多いです。
土地の区画・形質の変更を伴わない場合は、開発許可は不要です。

 

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/