介護付終身利用型有料老人ホームに入所すれば、小規模宅地の適用はないとした事例
介護付終身利用型有料老人ホームへの入所は一時的なものとはいえず、従って被相続人は家屋を居住の用に供していたとはいえず、小規模宅地の特例はできないとした事例
(平20.10.2東裁(諸)平20-52)
裁決要旨
請求人らは、本件被相続人が本件老人ホームに入所していたのは、介護を受けるための一時的なことであって、本件被相続人は本件老人ホームに入所する以前の家屋(以下「本件家屋」という。)に戻ることを望んでおり、本件家屋は、本件被相続人がいつでも生活できるように維持・管理されていたのであるから、本件家屋が相続開始の直前における本件被相続人の生活の拠点であり、本件被相続人の居住の用に供されていたのであるから、小規模宅地等の特例(以下「本|件特例」という。)の適用を認めるべきである旨主張する。
しかしながら、本件特例の適用対象となる被相続人の居住の用に供されていた宅地等とは、相続開始の直前において、被相続人が現に居住の用に供していた宅地等をいい、当該特例対象宅地等を敷地とする建物が現に存在し、これを居住の用に供している場合がこれに当たると解されるところ、相続開始の直前に当該建物を居住の用に供していない場合であっても、当該建物が一時的に空家になっていると認められる客観的事情があれば、被相続人の生活の拠点がなおその建物に置かれていると解することができ、当該建物を居住の用に供していると認めるのが相当であるものの、
本件老人ホームは、介護付終身利用型有料老人ホームであり、入所者は終身にわたって十分な広さと生活に必要な施設を完備した専用居室を利用でき、生活全般にわたる介護サービスの提供を受けることができたのであるから、本件被相続人は本件老人ホームで終身生活することが可能であったといえること、
本件被相続人は入所時に入所預り金〇〇〇〇円を支払い、月額利用料は年金等で賄うことができたから、経済的にも終身にわたって本件老人ホームを利用することができたといえること、
実際に本件被相続人は、相続開始まで本件老人ホームから入院治療以外に外出したことはなく、同ホームで生活していたことからすると、
本件被相続人は、本件入所契約により、終身の介護を受けることを前提として、本件老人ホームに入所したものといわざるを得ず、本件老人ホームへの入所は、客観的に見て一時的なものであったとはいえない。したがって、本件相続開始の直前において、本件被相続人が本件家屋を居住の用に供していたとはいえないから、本件特例の適用はできない。
(平20.10.2東裁(諸)平20-52)
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