病院の敷地は、 相当地代通達の定めによる評価が相当であるが、 法人である薬局に対応する敷地には、土地の無償返還に関する届出も地代の支払いもないけれども、個人が法人に土地を使用させたものであり、土地賃貸借における借地権があると、 認められた事例 令和元年8月19日裁決・広島・公開

請求人の主張

土地の無償返還に関する届出を提出したが、本体届出書には重大瑕疵があり本体届出書は無効であるから、本件土地は、 評価通達 25 の定めにより評価することになる。 土地の無償返還に関する届出書は、病院に対応する部分の届出はあるが、 薬局に対応する部分の届出はないので、 その評価額は貸宅地として評価すべきである。

原処分庁の主張

被相続人らは、 同族会社 (本件会社)が所有する登記された建物の敷地 (本件敷地)を含 む全ての土地 (本件土地) を医療法人に賃貸しているから、本件敷地は、医療法人が本件会社に更に賃貸 (転貸) したものというべきであり、また、被相続人及び医療法人は、土地の無償返還に関する届出書を原処分庁へ提出しているから、本件敷地の評価は、自用地としての価額の80%で評価することとなる。

国税不服審判所の判断

本件相続の開始時において、本件病院敷地は、本件医療法人が本件被相続人らから借り受けていたものであり、本件合意に基づく本件届出書は、本件病院敷地に係る部分については有効なものであると認められる以上、本件届出書の記載内容のその余の部分に誤り等が見受けられたとしても、本件届出書の 「土地の表示」欄に記載した本件各土地のうち本件病院敷地については、本件被相続人らが、 本件医療法人から無償返還を受ける合意があったものと認めるのが相当である。
したがって、本件病院敷地については、相当地代通達の定めにより、評価すべきである。

本件薬局敷地については、本件薬局敷地上には、本件会社が所有する本件薬局建物が存しており、本件会社は、本件薬局建物を建築する際に、本件被相続人らに対し権利金を支払わず、その後平成21年8月まで、本件薬局敷地を貸借する際に本件被相続人らへ地代を支払っていない。薬局
しかしながら、本件被相続人らと本件会社の間において、本件薬局敷地の賃貸借に係る契約書は存在しないものの、本件薬局敷地は、昭和55年から現在に至るまで長期間にわたって本件薬局建物の敷地として、 本件会社が利用しており、土地の貸借において当事者の一方が法人である場合には、その間の取引は第三者間における取引と同様の経済的合理性に従い行われるべきであるから、 将来無償で返還されるという特別の事情のない限り、個人が法人に対して建物の所有を目的として土地を使用させることを許諾したときに、 同土地に借地権が設定されたものと認めるべきである。

そして、本件においては、本件薬局敷地に関して土地の無償返還に関する届出書が提出されていないことからすれば、特別の事情は存在せず、本件会社の貸借対照表に借地権の計上がなく、 過去に権利金を認定した課税が行われていないことが推認されるとしても、そのことが本件薬局敷地の利用関係に影響して借地権の目的となっているか否かを左右するものではないのであるから、本件相続の開始時において、本件薬局敷地は借地権の目的となっている宅地と認めるのが相当である
したがって、本件薬局敷地については、相当地代通達の定めではなく、評価通達 25 の定めにより、評価すべきである。

コメント

審判所は、本科病院敷地は本体医療法人が被相続人から借受け、本件届出書は、本件病院敷地部分は有効であるので、本体届出書のその余の部分に誤りがあったとしても被相続人と本件医療法人から無償返還を受ける合意があったと認めるのが相当である。よって、本件病院敷地は、相当地代通達の定めにより評価すべきである。

本件薬局敷地は、 本体会社が所有する本件薬局建物が存し、本件会社は本件相続人に権利金を支払わず、本件薬局を賃貸する際に被相続人へ地代を支払っていない。
本件被相続人と本体会社の間において本件薬局の賃貸借契約書は存在しないが、本件薬局敷地は本件会社が利用しており、土地の賃貸において当事者の一方が法人の場合、その間の取引は第三者間の取引と同様の経済的合理性に従い行われるべきであるから、同土地に借地権が設定されたものと認めるべきである。

また、本件薬局敷地は、土地の無償返還届出書の提出はなく、特別の事情は存在せず、 本件会社の賃借対照表に借地権の計上もなく、本件相続開始日において本件薬局は借地権の目的となっている宅地と認めるのが相当である。
従って、本件薬局敷地は、相当代通達の定めではなく、 評価通達 25 の定めにより評価すべきである。 本件土地は、本件会社の借地権が存すると認めるのが相当である、と審判所は判断した。

不動産鑑定評価の実務においては、相当地代や土地の無償返還の届出の概念はなく、 相続税法等の税務独特な考えですが、 何かの参考になればと思い、 掲載しました。