本件土地を1画地として評価すべきか否かが争われた事例
本件土地を1画地として評価すべきか否かが争われた事例
(東裁(諸)平21第12号・平成21年8月26日裁決)
本件土地の概要
相続開始日現在において被相続人および請求人らは居宅の用にしていた本件家屋の敷地,本件建物への通路および庭として利用していた。平成19年2月,本件相続に係る遺産分割協議が成立し,本件A土地は請求人甲が1,000分の167,請求人乙が1,000分の833の共有で取得し,本件B土地は請求人甲が単独で取得した。
本件A土地は,683.67㎡の宅地で北側道路(幅員6m)に等高に接面するほぼ正方形の土地である。用途地域は第一種中高層専用地域(建ぺい率60%,容積率200%)である。本件A土地は本件家屋の敷地に該当する。本件B土地は355.91mの宅地で南側道路(幅員約6m)に等高に接面する長方形の土地である。本件-B土地は本件家屋の敷地の庭等に該当する。
本件土地は,一部に賃貸マンション等があるものの大半は中小規模の一般住宅が立ち並ぶ地域に所在する。
請求人の主張
評価通達7-2によれば,宅地については「1画地の宅地(利用の単位となっている1区画の宅地をいう。)を評価単位とする。」とされており,本件土地は,請求人甲が本件相続に係る相続税申告期限の日において,その全体1,039.58㎡を居住の用に供していることから,1画地の評価単位とすることに問題はないと思われる。
本件A土地に請求人乙の名義を入れたのは,請求人乙が代償金の受領を確実なものとするために,法定相続分の6分の1の名義を通すことを要望し,請求人甲はこれに応じることとなったものであり,実質的には本件土地全体を請求人甲が取得したものであること,さらに,「雑種地を評価するに当たっては,相続開始時において物理的に一体として利用されている土地ごとに区分して評価するのが,『相続開始時における財産の現況』に即した評価と解される。」旨判断した平成7年1月12日付の裁決事例は今回の審査請求に置き換えられる内容であることから,全体を1画地の宅地として広大地の評価を適用することが相当である。
原処分庁の主張
本件土地の評価は,課税時期である相続開始日現在の現況で評価することとなるが,評価単位は遺産分割後の取得者単位で評価することが相当である。本件土地は遺産分割により,本件A土地は請求人甲と請求人乙が共有で取得し,本件B土地は請求人乙が単独で取得したものであるから,本件A土地と本件B土地の取得者は異なっている。したがって,本件土地は本件A土地と本件B土地それぞれを1画地として評価すべきである。
審判所の判断
評価通達7-2は,「1画地の宅地」とは,その宅地を取得した者が,その土地を使用,収益および処分することができる利用単位ないし処分単位であって,宅地の所有者による自由な使用収益を制約する他者の権利の存否により区分し,他者の権利が存在する場合には,その種類および権利者の異なるごとに区分して,それを1画地の宅地として評価するのが相当と解される。また,同注書によれば,遺産分割が著しく不合理であると認められるときは,分割前の画地を「1画地の宅地」とするが,かかる事情がない限り,原則として分割後の画地を「1画地の宅地」とすることとなる。
本件土地は,相続開始日においては,遺産分割により,本件A土地は請求人乙が持分1,000分の167を,請求人甲が持分1,000分の833を取得し,本件B土地は請求人甲が単独取得したのであるから,本件B土地は,請求人甲にとって単独所有の自由地として何ら制約なく利用できる土地であるのに対し,本件A土地は,請求人乙と請求人甲の共有財産であり,共有物の変更や処分は共有者の同意が必要であるなど単独所有の場合と比較して使用,収益および処分について制約がある土地であると認められる。そして,本件遺産分割が著しく不合理であるか否かについてみてみると,本件A土地および本件B土地は,いずれも地積・地形および近隣の住宅の画地規模から,住宅の新築や戸建住宅地の分譲等の用途として有効活用でき,宅地として通常の用途に供することができないとは認められないことから,本件遺産分割が著しく不合理な分割であるとは認められない。
以上によれば,本件土地を1画地の宅地として評価する事情は認められず,本件遺産分割後の本件A土地およびB土地をそれぞれ1画地の宅地として評価することが相当と認められる。
コメント
本件A土地,本件B土地を区分して各土地を評価する決め手になったのは,共有物件か単独所有物件かということと,二方路に面する土地で本件A土地および本件B土地を分割しても各土地は各道路に接面し,相続による本件A土地および本件B土地が非合理分割にならないことがあげられる。本件A土地および本件B土地を共に共有物件にしてから共有物分割をすれば,本件A土地および本件B土地は【1039.58m全体が広大地として評価されるところであるが,それをできなくしたのは共有物件とするべきところ単独物件にしてしまったからであるといえよう。本来ならば,共有物件は争いの的になりがちであるが,本件土地を共有で相続した後,広大地を適用し評価を下げた後に共有物の分割をするという手法がある。相続後の共有物分割であれば,お互いの価値割合に変更がないため,贈与税等は課税されない。つまり,土地の評価単位を変えるだけで大きく評価減することができるし、節税にもつながる。本来相続案件の共有はすすめられないが,この場合は節税のための共同作業と割り切って行う有効な手法だと判断する。