広大地評価よりも時価鑑定が正しいとした事例

2020年6月12日

原処分庁の主張する広大地評価よりも請求人の主張する鑑定評価額が正しいとした事例。

(大裁(諸)平11第105号 平成12年4月18日)

事例の概要等

本件土地の概要

本件土地は、間口約9m、奥行約67.5mの長方形をした地積2,954㎡の土地である。
本件土地は粗造成地で、その地盤は若干の凹凸はあるものの、全体的には平坦で道路とほぼ等高である。

当該地域の標準的使用は店舗であるが本件土地が店舗の標準的地積より相当に大きいので、細分割して幹線道路沿いは店舗、それ以外の部分は住宅の敷地として利用するのが妥当である。

事案の概要等

原処分庁は、本件土地の最有効使用は宅地分譲であるとして、開発想定図に基づき財産評価基本通達24-4の広大地評価を適用して評価したが、請求人は、本件土地の自用地の価額は、請求人が提出した鑑定評価書の鑑定評価額であると主張する。

そこで、当審判所が本件鑑定評価書の内容について検討したところ、本件鑑定評価額は、取引事例比較法及び土地残余法に加え、本件土地の最有効使用である分割使用を想定した開発法を適用しており、これら三手法により求められた各価格は、いずれも適正に算定されていると認められる。

また、本件鑑定評価額の決定における各価格のウェイト付けも相当であると認められる。

そうすると、本件鑑定評価額は、本件土地の自用地の価額として相当であり、この価額は、原処分の額を下回ることから、本件更正処分の一部を取り消すべきであるとした。

裁決の要旨

請求人の主張

原処分は、次の理由により違法であるから、その一部の取消しを求める。

本件土地の自用地の価額は、次の理由により、不動産鑑定士の鑑定評価額とすべきである。

原処分庁は、評価通達に基づき算定しているが、この価額は客観的な時価を表している本件鑑定評価額を上回っている。

原処分庁の主張

原処分は、次の理由により適法であるから、審査請求を棄却するとの裁決を求める。

本件鑑定評価額は、比較方式、収益方式及び開発法による試算価格を加重平均して決定しているが、開発法による試算価格は、原価方式、比較方式及び収益方式の三方式により求められた鑑定評価額と比較考量するものであり、鑑定評価額の直接の算定根拠とはならないから、開発法による試算価格をも含めて加重平均して求めた本件鑑定評価額は適正な価額とは認められない。

審判所の判断

原処分庁は、本件土地の自用地の評価に当たっては、路線価を基に評価通達24-4の定める補正を行い評価しており、その価額は本件土地の相続開始時点の時価を上回っていない旨主張する。

本件土地は、県道沿いに店舗、住宅、駐車場及び田等が混在する地域に位置し、幅員約9mの県道に面するという立地条件から、その標準的な用途は店舗の敷地としての使用であると認められるが、他方、間口約9m、奥行約67.5mの長方形をした2,954㎡という対象地の地積が当該地域の店舗の標準的地積より相当大きいため、その最有効使用は、細分割の上、県道沿いの画地を店舗の敷地とし、それ以外の部分については住宅の敷地として利用するのが最も妥当であることが認められる。

しかしながら、原処分庁が想定した16画地の住宅地のうち県道に接しているのは3画地のみであり、他の13画地は県道に接していないにもかかわらず、原処分庁は16画地すべてが県道に接しているものとした価格で本件土地の自用地の価額を算定していることから、原処分庁主張額は、本件土地の自用地の価額を過大に評価したものと言わざるを得ず、本件土地全体の客観的な交換価値を示す価額とは言い難い。

原処分庁は、本件鑑定評価額の決定において、公示価格等を規準としていないことについて合理的な理由があるとは認められない旨主張する。

しかしながら、本件土地の面積が2,954㎡という相当広大なものであるのに対し、本件公示地の面積は■■■■しかなく、他に本件土地と類似する利用価値を有すると認められる公示地も存在しないことから、本件鑑定評価額の決定において公示価格等を規準としなかったもので、そのことについて合理的な理由がないとまでは言えず、原処分庁の主張は採用できない。

原処分庁は、開発法による試算価格をも含め加重平均して求められた本件鑑定評価額は適正な価額とは認められず、また、比較方式による取引事例価格の地域要因修正における根拠も明確でない旨主張する。

しかしながら、不動産鑑定評価基準は、「原則として、原価方式、比較方式及び収益方式の三方式を併用すべきであり」あるいは、各評価手法による試算価格を「相互に関連づけることにより行わなければならない。」としており、この基準は、本件鑑定書のように、各評価手法の評価の適性や評価の精度を考慮した上で、加重平均して価格を決定することを肯定していると解される。

本件鑑定書では、本件土地の面積が近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きいことから分割利用することが最有効使用と判断し、取引事例比較法による比準価格、土地残余法による収益価格及び開発法による試算価格をそれぞれ比較考量し、比準価格を100、収益価格及び開発法による試算価格をそれぞれ20とする加重平均を行っているが、当審判所の現地調査等によっても、この加重平均は相当なものであり、これに基づき算定された本件鑑定評価額は適正な価額であると認められ、また、比較方式による本件土地と取引事例の地域要因格差修正等も的確に行われていることが認められることから、原処分庁の主張を採用することはできない。

以上のとおり、本件土地の自用地の評価額として算定された本件鑑定評価額354,480,000円は、上記のとおり、合理的かつ適正に算定されており、本件土地の自用地の客観的な交換価値を示す価額として相当なものと認められる。

なお、本件土地の価額は、評価通達86の定めにより、当該土地の自用地の価額から賃借権の価額を控除した金額により評価することについて、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によっても相当と認められる。

 

コメント

本件土地は①2,954㎡という規模の大きな宅地であること、②店舗等が建ち並ぶ県道沿いの路線商業地域に存するも、県道より奥に入れば住宅が建ち並ぶ地域に存する土地であるという特長があります。

原処分庁は本件土地の時価は財産評価基本通達24-4の広大地評価によって求めましたが、請求人側は、県道沿の土地は店舗、それ以外の奥の土地は戸建分譲住宅が最有効使用と判定し土地の開発図面作製をつくり宅地開発を想定し不動産鑑定士による時価鑑定を行った結果、審判所はそれを認めました。

なぜ時価鑑定を認めたかについては、戸建分譲住宅に土地を区画形質の変更を行って開発道路をつくって宅地開発するには造成費用がかさむためです。

土地の造成費用が通達で定めれらた補正率では足りないのです。

その不足分は当然に評価増となって時価に反映されます。

したがって、今までの経験から判断して地積が1000数百㎡以上の土地(宅地)は旧広大地に該当すれば時価鑑定をする方が通達により求めた価額より下廻ります。

通達に基づき地積規模の大きな宅地の評価のみをして申告していては、不当に高い評価になっている可能性がありますので1000数百㎡を越える宅地については時価を超えていないかどうかをチェックする必要があります。