1200㎡の土地、広大地か!!
広大地は、昨年(H29年)12月31日をもって終わりましたが、広大地による相続税還付はこれからも活用できます。
路地状開発が一般的に行われているか否かの判断を示す資料に乏しく、争いになるケースが多いです。
本件もその1例です。
私は裁決事例を学びながら、反面教師として実務に生かすようにしてきました。裁決事例は学びの宝庫です。
本件地域において戸建住宅分譲用地として路地状開発が一般的に行われているといえるので、本件土地の場合公共公益的施設用地が必要とは認められないので、広大地には該当しないとした事例(関裁(諸)平23第13号 平成23年12月6日裁決)
本件土地の概要
本件7土地は、1,191.37㎡の地積で、相続発生日において畑である。
又生産緑地に該当する。
本件7土地が属する用途地域は、第一種住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)である。
本件土地が存する地域は、一般住宅の中にアパート等がみられる住宅地域である。
争点
本件7土地は、評価通達24-4に定める広大地に当たるか否か。
原処分庁の主張
本件7土地の周辺地域において、路地状部分を有する宅地を組み合わせた戸建住宅の敷地の分譲開発(以下「路地状開発」という。)が散見されるところ、本件7土地は、その形状や公道からの接道状況を併せ考えると、別図1のとおり、路地状開発が可能であると認められるから、開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要とは認められず、評価通達24-4に定める広大地に当たらない。
請求人らの主張
本件7土地は、面積が1,191.3㎡あり、経済的に最も合理的な開発行為を想定した場合、別図2のとおり、2本の行き止まり進入路の設置が必要であり、公共公益的施設用地の負担が必要であるから、評価通達24-4に定める広大地に当たる。
なお、本件7土地の周辺地域において、路地状開発は4件ほど散見されるものの、路地状開発が一般的に行われているとは認められない。
審判所の判断
(イ)本件7土地の面積が本件地域内の標準的な宅地の地積に比して著しく広大であるかについて
本件地域は、一般住宅化が進んでいる地域であり、その標準的使用は戸建住宅の敷地であると認められ、本件指導要綱において区画割をする際の宅地の1区画の敷地面積を100㎡以上としていること及び本件地域において行われた戸建住宅の敷地の分譲開発の1区画当たりの面積が102.32㎡から125.99㎡までであることからすれば、本件地域における標準的な宅地である戸建住宅の敷地面積は、100㎡から130㎡程度までの規模であると認められる。したがって、本件7土地の面積1,191.37㎡は、本件7土地の所在する■■の開発行為の許可を受けなければならない面積である500㎡以上であり、上記の標準的な宅地の地積である100㎡から130㎡程度までの規模に比して著しく広大であると認められる。
(ロ)次に、戸建住宅の敷地として分譲開発した場合に公共公益的施設用地の負担が必要かどうかに関し、開発道路の設置による開発と路地状開発による開発との経済的合理性について以下比較検討する。
(1) 請求人らは、別図2のとおり、幅員4mの開発道路を2本設置して8区画の戸建住宅の敷地として分譲開発した場合の区画割をし、本件7土地に公共公益的施設用地の負担が必要であると想定している。
この区画割による各区画の平均面積126.5㎡は、上記(イ)の本件地域における標準的な宅地の地積の規模であり、各法令の規定に適合し、本件指導要綱の定めにも従ったものであると認められるが、開発道路を設置することとしているため、その分潰れ地が生じ、戸建住宅の敷地として有効に活用できる面積が減少している。
(2) 一方、原処分庁は、別図1のとおり、路地状部分の幅員を2.5mとする路地状開発を行うことにより、東西2つ、南北4つの8区画の戸建住宅の敷地として分譲開発し、本件7土地に公共公益的施設用地の負担が必要でないと想定している。
この区画割は、各区画の面積が132.5㎡から156.2㎡までと上記(イ)の本件地域における標準的な宅地の地積の規模を上回っているが、
①南北の区画を5つに増やし全部で10区画にするなどして、本件地域における標準的な宅地の地積の規模の範囲で、同様の路地状開発を行うことが可能であること、
②かかる区画割によっても、上記■■■や本件指導要綱の定めに反していないこと、
③このような路地状開発が開発道路を設置する場合に比べ路地状部分も敷地面積に算入できるといった建ぺい率等の計算上有利な面があること並びに
④本件地域において路地状開発が一般的に行われていると認められることからすれば、路地状開発による区画割りの方が、開発道路を設置する区画割りに比べて、戸建住宅の敷地の開発において経済的に合理性があるということができる。
(3) そうすると、路地状開発により公共公益的施設用地の負担が必要でないと想定した区画割による開発の方が、開発道路を設置して公共公益的施設用地の負担が必要であると想定した区画割りによる開発に比べて経済的合理性があると認められることからすれば、本件7土地を経済的に最も合理性のある戸建住宅の敷地として分譲開発した場合に公共公益的施設用地の負担が必要ではないと認めるのが相当である。
(4) なお、請求人らは、本件7土地の周辺地域において路地状開発の行われた事例が4件ほど散見されるものの、それが一般的に行われているとは認められない旨主張する。
しかしながら、請求人らが周辺地域として主張する地域は、上記によれば、■■■の第二種中高層住居専用地域であり、本件7土地の存する地域とは行政区域及び用途地域が異なっており、本件7土地の存する地域とは行政区域及び用途地域が異なっており、本件7土地の存する地域と環境や利用状況が同一であるとはいえないから、かかる地域の状況を基に路地状開発が一般的かどうかについて判断するのは相当でなく、上記④のとおり、本件地域において戸建住宅分譲用地として路地状開発が一般的に行われているといえることからすれば、この点に関する請求人らの主張は採用できない。
(ハ)以上のとおり、本件7土地は、本件地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であると認められるものの、経済的に最も合理性のある戸建住宅の敷地として分譲開発した場合に公共公益的施設用地の負担が必要であるとは認められないことから、評価通達24-4に定める広大地に該当しない。
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コメント
(1)本件土地は、経済的に最も合理性のある戸建住宅の敷地として分譲開発した場合に、路地状開発により公共公益的施設用地の負担が必要ではないと考えられるので、評価通達24-4に定める広大地に該当しない、という結論でした。
(2)本件裁決書において「請求人らは、本件7土地の周辺地域において路地状開発の行われた事例が4件ほど散見されるが、これが一般的に行われているとは認められない」と主張していますが、審判所は「本件地域において戸建住宅分譲用地として路地状開発が一般的に行われているといえる」と判断し、請求人らの主張を退けています。
請求人らと審判所、原処分庁とは路地状開発の事例に対する考え方に相当の温度差がありますが、広大地になるか否かを判断するにあたりその地域及びその周辺の地域に路地状敷地の土地や路地状開発の物件があるか否かを十二分に確認することは必須です。
手間がかかるかもしれませんが、是非とも十二分に確認作業を行って頂きたいと思います。
路地状開発を行うことが合理的と認められるか否かは下記の事項を総合的に勘案して判断することになります。
①路地状部分を有する画地を設けることによって、評価対象地の存する地域における「標準的な宅地の地積に分割できること ②その開発が都市計画法建築基準法、都道府県等の条例等の法令に反しないこと ③容積率及び建ぺい率の計算上有利であること ④評価対象地の存する地域において路地状開発による戸建住宅の分譲が一般的に行われていること |
なお、路地状開発とは、路地状部分を有する宅地を組み合わせ、戸建住宅分譲用地として開発することをいいます。
関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/)