不動産鑑定士と懲戒処分

2019年7月11日

不動産鑑定という仕事は、お客様より依頼を受けて不動産の価額を把握し、価額を出す仕事です。

長いことこの仕事に従事しておりますと、この価格にしてほしい、いや、もっと安くしてほしいと指示を受けることもあります。

我々の仕事も商売ですから、仕事がほしい、受注したいというのは正直なところです。でもお客様の希望金額、指示金額を鵜呑みにしてその価額を出して不当鑑定だということで、処罰の対象になるケースもあります。

場合によっては、1年間資格停止であったりします。

平成25年12月に懲戒処分を受けた不動産鑑定士の懲戒処分の理由は下記の通りです。

A鑑定士が懲戒処分(7か月間資格停止)された懲戒処分の理由

①発行した不動産鑑定書は、あいまいで、誤解を招く表示がみられ、適切な市場分析を行っていないほか、依頼者の作成資料に頼った個別的要因の分析、評価類型に反した評価等の不適切な鑑定評価方式の適用等、専門職業家として極めて慎重を欠く軽率な行為に基づくものであると認められる。

なお、有責と認められる事項については以下のとおり。

(1)不動産鑑定評価書の個別的要因の説明が稚拙で、対象不動産の確定・確認の説明が不十分である。また、評価手法においても不動産鑑定評価基準に適切に則っていないほか、対象不動産の地番や地積等基本的部分の表記にも誤記が見られる。

(2)急峻な傾斜地が多く介在する対象不動産について、宅地分譲を想定しながら合理的な事業想定がない評価となっているほか、対象不動産の一部に店舗・リゾートマンション等市場性の弱い利用想定を行い、合理的理由のない増価修正による評価を行っている。

(3)対象別荘地の市場分析において、対象分譲地内の取引事例を分析したのみで、代替関係にある同一需給圏内の類似地域等の市場分析を行っていない。また、対象地の眺望が優良であるとするが、他の別荘分譲地との比較検討がなされておらず、専門家として成すべき考察を放棄している。

(4)不動産鑑定評価書に署名・押印ではなく、記名・押印しており、「不動産の鑑定評価に関する法律」第39条第2項に抵触している。

 

以上は実際に処分対象になった方の処分理由の一部を掲載しました。

仕事は誠実に、お客様に喜んで頂けるように努めたいという気持ちに変わりはありません。

いい仕事をしたいものです。

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