遺産分割をする場合の価格の種類
不動産の価格を求める場合、
『鑑定評価によって求めるべき価格の種類は、原則として、正常価格です。
ただし、相続の限定承認の場合であって、相続財産を持って債務者に弁済する場合の不動産処分を目的とする鑑定評価において求めるべき価格の種類は、原則として、早期売却を前提とする特定価格である(民932条)。この場合、当該相続人及び他の共同相続人の合意、又は代理人より正常価格の鑑定評価を要請された場合は、正常価格による。
事業用資産について事業の継続を前提とする価格は、不動産鑑定評価上、求めるべき価格は特定価格である。これを遺産分割協議ではどう考えるべきかは、困難な問題である。遺産分割では、単なる相続財産の分割のみならず、こうした事情をどのように反映させるべきかという視点も必要になろう。また、事業主体たる会社の株式評価のための鑑定評価では、求めるべき価格の種類は、正常価格か、特定価格か、という問題もある。
相続に関する鑑定評価における特徴として、不動産の共有持分評価の可能性が多い点をあげることができる。共有持分価格は、必ずしも当該全体としての不動産価格に持分を乗じて得られる額に一致しない(持分そのものは市場性が劣る)。しかし、遺産分割協議では、求めるべき価格は、一般に、持分比を乗じて得られる価格である。鑑定評価においては、全体としての不動産の鑑定評価として受け止めることとし、持分価格は付属意見として「算定価格」を明示する。又は、参考価格としてはどうであろうか。』
『不動産鑑定をめぐる諸問題』(判例タイムス社刊)より転載
一般的に不動産鑑定士は、依頼者様の指示に従って、鑑定評価をする条件をつめていくことになります。その過程において、正常価格、特定価格、限定価格等を決めていきますが、その価格の種類によって求める価格が大幅に異なる場合があります。
したがって、どのような種類の価格を求めるべきかは、依頼者の意見を十二分にお聞きしてよく検討する必要があります。
鑑定を依頼する場合、誠実な不動産鑑定士を選び、当事者が協議し、よりよい鑑定書を作成して、問題解決にあたるべきであろうと思います。