大規模店舗の敷地よりも戸建住宅分譲の方が高い価額になるから広大地だという考え方って?

2019年4月26日

グラフ・資料土地の最有効使用の判定は、当該宅地が最も高い価格となる利用方法をもってその土地の最有効使用とするという考え方でもって相続税法上の時価を求めることはリスクが伴う事例を下記に掲載しました。

本件土地の価格は、大規模店舗などの敷地として試算するより、戸建住宅分譲用地として試算する方が高くなるとして、本件土地の最有効使用は戸建住宅分譲用地である。したがって戸建住宅分譲用地に開発行為を行うとした場合、公共公益的施設用地の負担が必要なので、広大地だといって争った裁決事例です。

不動産鑑定評価基準相続税法の広大地の考え方には考え方に違いがあるので

不動産鑑定士は依頼を受けた場合、鑑定書を何の目的に使われるかをよく聞く必要があります

大規模店舗等の敷地として試算するよりも、戸建て住宅分譲用地として試算する方が高く土地の価格がでてきても、

即決して結論を急がないようにするべきです。

以下に実際に争われた裁決事例(平成26年6月24日裁決、関信)の一部を掲載します。

 

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ロ 本件土地を経済的に最も合理的な特定の用途に供するために開発行為を行うとした場合、公共公益的施設用地の負担が必要であるか否かについて

(イ)本件土地の最有効使用について

A 上記(2)イのとおり、本件土地の属する本件地域の土地のほとんどは、大規模商業施設及びその附属駐車場として利用されており、上記(2)ニのとおり本件相続開始日後本件地域内の近隣A土地及び近隣B土地に新たに広大な敷地を有する商業施設が2店舗開店するなど、一層の商業地域化が進められている地域である

とすると、本件土地も本件地域に属する土地として、大規模商業施設及びその附属駐車場として利用するのが経済的に最も合理的であるといえ、本件土地の最有効使用は、大規模商業施設及びその附属駐車場用地と認めるのが相当である

 

B この点、請求人らは、土地の最有効使用とは、当該宅地が最も高い価格となる利用方法を指すとした上で、本件土地の価格は、大規模店舗等の敷地として試算するより、戸建住宅分譲用地として試算する方が高くなるとして、本件土地の最有効使用は戸建住宅分譲用地であるとする

しかしながら、そもそも土地の最有効使用とは、上記(1)ロのとおり、当該土地の価額を計算する前提として観念するものであり、土地の資産価格や鑑定評価額とは、飽くまで最有効使用を前提として算出されるものである

これは評価通達24-4の要件に限った理論ではなく、土地鑑定の理論としても一般的な考え方であり、最有効使用とは、当該土地の存する周辺地域の状況、社会的状況及び経済状況等を踏まえた複合的な要因から判定するものとされている

そして、このようにして判定された最有効使用を前提に、取引事例比較法、開発法といった鑑定手法の中から、当該土地に合った合理的な手法を用いて土地の価額を算出するのである。

ところが、請求人らの主張は、要するに土地の価格を先に算出した上で当該土地の最有効使用を検討するというものであり、これは土地鑑定の理論からすると全く逆の手順なのであって、独自の見解といわざるを得ず、採用の限りではない。

また、請求人らは、本件土地の過半が第一種低層住居専用地域に属すること、本件土地周辺では同規模の土地は戸建住宅分譲用地となることが多いこと、および、本件土地の現状の利用方法は本件土地の建ぺい率、容積率を十分に活用できていないことは、いずれも本件土地の最有効使用が戸建住宅分譲用地であることを根拠付ける旨主張する

しかしながら、本件地域では本件国道沿いに商業施設が立ち並び、その後方に付属の駐車場を併設する形態の土地利用方法が多く見られるうえ、商業施設に付属する駐車場は、本件国道沿いの土地に限らず周辺の戸建住居が散見される地域にも存しており、本件地域内はもとよりその周辺の土地は、指定された用途地域をまたぐ形で商業施設及びその附属駐車場として利用されていると評価できる

とすると、本件土地の過半が第一種低層住居専用地域に指定されているとしても、本件土地を大規模商業施設及び附属駐車場用地として利用することはなお一般的かつ合理的であるといえる

また、本件土地周辺では本件土地と同規模の土地は戸建住宅分譲用地となることが多いという主張については、そのような事実を認定できる証拠が存せず、当審判所の調査においても本件国道沿いにおいて大規模な戸建住宅の分譲開発が行われた事実が認められないこと、また、本件土地の現状の利用方法は本件土地の建ぺい率、容積率を十分に活用できていないという主張についても、許された建ぺい率及び容積率の上限を使って土地を利用することが、常に当該土地の利用方法として最も経済的に合理的とはいえないことからすると、この点に関する請求人らの主張はいずれも採用できない。

 

※長い文章をお読み頂きありがとうございました。