広大地と個別事情

2019年6月12日

広大地と個別事情

広大地か否かを判断するにあたり、対象地における「個別事情」を考慮する必要はない、という事情があります。

広大地裁決事例

この項目はとても重要な事です。広大地は想定条件が多く、なおかつ正確にこうですと定めた事項も少ないことも事実です。

以下長文ですがお読み下さい。色々と応用できると思います。

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「個別事情」とは・・・

①たとえば平成23年10月3日の裁決事例(大阪・無道路地)があります。

部名 大阪 裁決番号 平230011 裁決年月日 平231003 裁決結果 棄却
争点番号 400802013 争点 8財産の評価/2土地及び土地の上に存する権利/1通則/3評価基準の適用

○ 請求人は、請求人が相続により取得した土地(本件土地)の評価に当たり、

①本件土地は、南側路線に幅員1.4mしか接しておらず、正面路線価の影響を受けているとはいえないこと、

②本件土地は、開発不可能な土地であるから、開発行為による土地利用を前提とした財産評価基本通達40−2《広大な市街地農地等の評価》を適用すべきでないこと及び

相続開始前から、本件土地への通路を確保するために隣接地等の買取り交渉を行ってきたが、買取ることができなかったことを理由に、同通達により評価することが不合理と認められる特別な事情がある旨主張する。

①確かに本件土地は、接道義務を満たしていない無道路地に該当するが、南側路線の隣接地の一部を買い取ることでその要件を満たすため建築物を建築することが可能となること、

②本件土地は、市街化区域に所在しており、法令により開発が禁止されている土地ではなく、通路幅を確保することにより、本件土地の開発が可能となること、また、

隣接地を取得することが不可能であるといった事由は飽くまで当事者間の事情であること、加えて、当審判所の調査の結果によっても、本件土地について財産評価基本通達を適用して評価することが特に不合理と認められる特別な事情は存在しない。

なお、請求人は、本件土地の価額は、請求人の主張する不動産鑑定評価額を上回ることはない旨主張するが、同不動産鑑定評価額には、本件土地の利用状況の判定や取引事例比較法に基づく比準価格の認定などにおいて不合理な点が認められるから、

同不動産鑑定価額と本件土地の相続税評価額とがかい離しているとしても、そのことをもって財産評価基本通達により評価することが不合理と認められる特別な事情があるということもできない。(平23.10. 3 大裁(諸)平23-11)

②広大地は貸地(底地)借地権においても適用可能ですが、貸地(底地)上の借地権者との間で立ち退き交渉でもめていたり、地代について争い中であったとしても、上記のごとく個別事情は考慮外ですので、争いがあっても広大地は適用されます。

広大地の適用と当事者間の事情等について

広大地の適用にあたり、路地状開発の合理性と当事者間の事情について国税不服審判所の見解がでている文章をみつけましたので掲載します。

本件相続の開始前10年間において道路開設した事例はなく、大半は路地状開発であることから、本件仮換地は、同通達に定める広大地に該当しないとした事例

(関裁(諸)平27代23号 平成27年12月15日裁決)

『以上の検討に加えて、本件相続の開始後において、本件土地が、広大地に該当しないことを前提とする評価額(103,587,040円)を上回る価額(■■■)で譲渡された上、本件仮換地について、実際に別図4のように路地状宅地を組み合わせた宅地分譲がされたことをも合わせ考慮すると、本件仮換地の経済的に最も合理的な開発方法は路地状開発であると認められる。

なお、別図4のように路地状開発をした場合、約214㎡の路地状宅地については建ぺい率や容積率の算定に当たり路地状部分を含めることができず、また、その土地上に建築する建物を防火構造の外壁とするなどの制限がある(■■■及び■■■)が、これらの制約が路地状開発の合理性を失わせるような事情とまではいえない。

ハ これに対し、請求人らが主張する道路を開設する開発方法についても、本件仮換地についての経済的合理性のある開発方法の一つであること自体肯定できるものの、本件仮換地についての経済的に最も合理的な開発方法が路地状開発であることは上記のとおりであり、請求人らが主張する事情を考慮しても上記判断を左右しない。

また、請求人らは、本件合意道路は実質的に潰れ地であり、公共公益的施設を設置したのと同じである旨主張する。しかしながら、当該路地状宅地の所有者間の合意により、本件合意道路について道路の廃止をすることも可能であり、また、各路地状宅地の実際の販売価格に本件合意道路の部分が反映されていないとしても、それは当事者間の事情にすぎないのであり、本件仮換地の客観的交換価値を左右する事情とはいえない。したがって、この点に関する請求人らの主張には理由がない。』

 

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/