マンション適地と広大地判定

2019年6月12日

本件土地は、マンション適地等に該当する要件を満たすので、広大地に該当しないとした事例
(東裁(諸)平22第82号平成22年10月18日裁決)

広大地に該当しないとした事例

 

1.本件土地の概要

本件土地は駅から約300mと、徒歩圏に所在する面積1685㎡の土地。本件土地を法人に賃貸し、同社は賃貸駐

車場として利用している。用途地域は第1種住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)、効率小学校及び効率中学校はいずれも5分ないし10分程度に所在し金融機関や商業施設は○○周辺に所在する。

2.請求人らの主張

次の理由から、本件土地は広大地として評価すべきである。

イ評価基準通達24-4の「その地域」の範囲について

(イ)原処分庁は、「その地域」の判定に当たり、自然的状況、公法上の規制、土地の利用状況の連続性を勘案したとするが、本件の場合、○○○は川幅が狭く架橋も多くあるので、同川が標準的な宅地の使用状況の連続性を分析させるほどの自然的要因ではない。

(ロ)仮に、「その地域」を原処分庁が主張する地域であるとしても、本件の場合、「その地域」における標準的な土地使用は戸建住宅地である。

そして、○○○宅地開発事業に関する要綱において独立低層住宅を目的とする宅地開発の事業の一区画の敷地面積は原則として135㎡以上とされていること、また、公示地(○○○)の地積が○○㎡であることからすれば、「その地域」における標準的な宅地の地積は、135㎡から150㎡と解されるところ、本件土地の地積(1,685㎡)は、これに比して著しく広大である。

ロ 本件土地は、マンション適地等に当たるか否か

(イ)原処分庁が「その地域」とする中には中高層集合住宅が存するが、これらはいずれも賃貸用マンションである。

賃貸用マンションについては、企業社名、寮のように経済的合理性よりも福利厚生及び社会性に重きをおいているものや、地主が土地代を含めない採算計画で建築するものも多いことから、本件土地に中高層集合住宅等の建築が可能であっても、必ずしも経済的に最も合理性があると認められているとはいえない。

(ロ)さらに、原処分庁が「その地域」と判断する地域内においても、個別分譲されたと思われる敷地及び戸建住宅地があり、戸建住宅と中高層集合住宅が混在する地域である。

課税の実務では、評価対象地について戸建住宅と中高層集合住宅等が混在している場合には、周辺の状況や専門家等の意見から判断し、明らかにマンション適地等と認められる場合を除き、広大地に該当するものとしている。

請求人提出の不動産調査報告書によれば、本件土地をマンション適地等に該当しないと判断しているのであるから、これをマンション適地等と認めることはできない。

(ハ)以上から、本件土地はマンション適地等に該当しない。

(2)原処分庁

次の理由から、本件土地はマンション適地等に該当することから広大地として評価することはできない。

イ 本件土地は、マンション適地等に当たるか否か

(イ)マンション適地等に該当するか否かの判定に当たっては、その評価の対象となる宅地における用途地域・建ぺい率・容積率のみならず、交通、教育、医療等の公的施設や商業地への接近性及び「その地域」における土地の利用状況などを総合勘案して、行政的・社会的・経済的の各見地から判断するのが相当であるところ、本件土地は、①本件土地の行政的規制によれば、中高層の集合住宅の建設も可能であると認められること、②本件土地は交通・公共・商業施設に近接している上、③○○○地区は、中高層の集合住宅等の敷地用地として利用されているものが数多く存し、特に、本件土地と同等以上の敷地規模のものについては、中高層の集合住宅等の敷地用地として利用されており、その中には本件土地に隣接する宅地が含まれていることが認められることを総合勘案すれば、本件土地は、マンション適地等に該当すると認められる。

(ロ)請求人らは、賃貸用の中高層の集合住宅については、社宅や社員寮のように経済的合理性に重きを置いていないものや、地主が土地代を含めない投資回収計画で建築する例が多く、必ずしもその利用が経済的に最も合理的とは限らない旨主張するが、その土地の利用方法としては、戸建住宅による福利厚生施設又は賃貸住宅を建築するという選択肢も当然あるところ、これを選択せず、中高層住宅による福利厚生施設又は賃貸住宅が建築されていることからすれば、このことはとりもなおさず、その土地の利用方法として中高層の集合住宅を建築することが経済的に最も合理的であると認められることの証左である。

3 原処分庁の主張

次の理由から、本件土地はマンション適地等に該当することから広大地として評価することはできない。

イ 本件土地は、マンション適地等に当たるか否か

(イ)マンション適地等に該当するか否かの判定に当たっては、その評価の対象となる宅地における用途地域・建ぺい率・容積率のみならず、交通、教育、医療等の公的施設や商業地への接近性及び「その地域」における土地の利用状況などを総合勘案して、行政的・社会的・経済的の各見地から判断するのが相当であるところ、本件土地は、①本件土地の行政的規制によれば、中高層の集合住宅の建設も可能であると認められること、②本件土地は交通・公共・商業施設に近接している上、③■■■地区は、中高層の集合住宅等の敷地用地として利用されているものが数多く存し、特に、本件土地と同等以上の敷地規模のものについては、中高層の集合住宅等の敷地用地として利用されており、その中には本件土地に隣接する宅地が含まれていることが認められることを総合勘案すれば、本件土地は、マンション適地等に該当すると認められる。

(ロ)請求人らは、賃貸用の中高層の集合住宅については、社宅や社員寮のように経済的合理性に重きを置いていないものや、地主が土地代を含めない投資回収計画で建築する例が多く、必ずしもその利用が経済的に最も合理的とは限らない旨主張するが、その土地の利用方法としては、戸建住宅による福利厚生施設又は賃貸住宅を建築するという選択肢も当然あるところ、これを選択せず、中高層住宅による福利厚生施設又は賃貸住宅が建築されていることからすれば、このことはとりもなおさず、その土地の利用方法として中高層の集合住宅を建築することが経済的に最も合理的であると認められることの証左である。

4.審判所の判断

(1)法令解釈等

イ 評価基本通達24-4について

(イ)評価基本通達24-4は、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、都市計画法第4条第12項に規定する開発行為(以下「開発行為」という。)を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの(広大地)について、減額の補正を行う旨定めている。

(ロ)また、評価基本通達24-4の趣旨にかんがみれば、同通達でいう評価対象地の属する「その地域」とは、利用状況、環境等がおおむね同一と認められる、ある特定の用途に供されることを中心とした、ひとまとまりの地域を指すものと解するのが相当であり、①河川や山などの自然的状況、②行政区域、③都市計画法による土地利用の規制など公法上の規制等、④道路、⑤鉄道及び⑥公園など、土地の使用状況の連続性及び地域の一体性を分析する客観的な状況の有無などを総合勘案し判断されるべきである。

(ハ)そして、①評価対象地の近隣地区又は周辺の類似地区に現に中高層の集合住宅等が建てられ、若しくは、その地域が中高層の集合住宅等の利用に移行しつつある場合、あるいは、②その評価対象地における用途地域・建ぺい率・容積率や地方公共団体の開発規制等、交通、教育、医療等の公共施設や商業地への接近性から判断(社会的・経済的・行政的見地から判断)して、中高層の集合住宅等の敷地用地に適していると認められる場合には、これをマンション適地等に該当するものと解すべきである。

(2)認定事実

(ホ)○○地区のうち、○○支流の南側の地区(以下「○○○南側地区」という。)は、戸建て住宅、アパート、駐車場などが一部にみられるものの、昭和54年以降10数棟の3階ないし6階建ての中高層の集合住宅が建築されており、特に本件土地と地積が同程度以上の土地については中高層の集合住宅としての開発が多い。

(ヘ)当審判所の調査によれば、○○○○南側地区には複数の戸建住宅地に開発された一団の土地が5か所あり、そのうち2箇所は開発時期が古く開発関係資料を確認できなかったものの、開発道路を設けて開発されたものと推認できるが、他の三か所については開発に係る総敷地面積が狭く、またその地形から見て中高層の集合住宅等の建設は不可能であったと認められる。

(3)あてはめ

イ マンション適地等について

本件土地の属する「その地域」は、上記イのとおり、○○○南側地区であると認めるのが相当であるところ、これを本件についてみると、本件地域は、上記(2)のイの(ロ)のとおり、徒歩圏内に利用できる駅が複数あり交通の便も良く、公立の小中学校、金融機関や商業施設にも近いなど利便性の高い地域に所在すること、上記(2)のロの(ホ)のとおり○○○南側地区の近年の開発状況をみると、中高層の集合住宅等の敷地用地としての開発が多く、本件土地と同程度の地積規模の土地については中高層の集合住宅等の敷地用地としての開発が多いことが認められること、また、上記(2)のロの(ヘ)のとおり、中高層の集合住宅等が建築されていない土地については、面積が狭小又はその地形から建設が不可能であったことが認められる。

以上のことから、本件土地は、社会的・経済的・行政的見地から総合的に判断すると、マンション適地等に該当するものと認められる。

ロよって、本件土地は、評価基本通達24-4に定めるマンション適地等に該当するから、本件土地は広大地として評価することはできない。

 

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コメント

本件土地が広大地に該当せずに、マンション適地等であるとした理由に『本件地域は、徒歩圏内に利用できる駅が複数あり交通の便も良く、公立の小中学校、金融機関や商業施設にも近いなど利便性の高い地域に所在すること、○○○南側地区の近年の開発状況をみると、中高層の集合住宅等の敷地等の敷地用としての開発が多く、本件土地と同程度の地積規模の土地については中高層の集合住宅等の敷地用地としての開発が多いことが認められること』と掲げています。

特に本件土地と同規模の土地がどう利用されているかは広大地評価の判定において大きなウエイトを占めてきます。又その地域の建物の建築動向分析は広大地判定には欠かせません。

上記の内容をまとめるとこうなります。

・駅への接近性

・公共公益施設への接近性

・その地域に人が集まる商業施設等(銀行・店舗等)が集積しているか否か

・その地域の建物の建築動向

マンション適地等か否かの判断は、上記の項目のように「社会的、経済的、行政的な」立場から判断してマンション適地等であるという考えと現にマンション等が建築中であったり、すでにマンションが数多く建築されているという現実をもって判断されると思います。

したがって、その地域を分析することが大切になってきます。

 

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/