マンション適地か否か

2019年6月11日

4階建の共同住宅の敷地は、マンション適地ではないとした事例です。

東裁(諸)平20第151号 平成21年4月6日裁決

1.あらまし

4階建の共同住宅の敷地は、マンション適地ではないとした事例です。

本件D土地は面積3355㎡、駅から約800mに位置し、三方(北西、西南、南側道路に接面する土地で、北西側間口約5mです。用途地域は第一種低層住居地域(建ぺい率50%、容積率80%)

認定事実

本件D土地は、平成12年9月25日付の土地賃貸借契約により○○に賃貸され、同社所有の建物(鉄筋コンクリート造陸屋根4階建の共同住宅、昭和45年10月30日新築)2棟の敷地の用に供されている。

本件D土地の属する用途地域は、第一種低層住居専用地域で建ぺい率50%、容積率80%である。

本件D土地における用途地域の指定、10mの高さの制限、容積率の規定は、昭和48年12月25日から定められたものである。

国税不服審判所の判断

マンション適地等は、その住宅を中高層の集合住宅等の敷地として使用するのが最有効使用であり、開発の際に道路等の潰れ地が生ずることはないから、広大地に該当しないとされている。
そして、中高層の集合住宅等の敷地として使用するのが最有効使用と認められるか否かの判断は、その土地の周辺地域の標準的使用の状況を参考として判断するのが相当である。

上記より、本件土地の周辺の地域の標準的使用の状況をみると、下記の事項が認められる。

付近の土地の利用状況は、一部に3階建程度の集合住宅が存するものの大部分は戸建住宅の用に供されていること。

本件相続開始日前5年程度の近隣での住宅開発状況は、戸建住宅となっているものが多く、その中には地積2,000㎡以上の土地が含まれていること。
そうすると本件土地の周辺地域の標準的使用は戸建住宅の敷地であるということができる。

本件D土地上には鉄筋コンクリート造陸屋根4階建の共同住宅が存在している。しかしながら、当該建物は建築後すでに35年を経過していること、本件相続開始日においては、当該建物建築後の都市計画の変更により、同じ4階建の建築物の建築はできないことなどの特殊事情があることからすれば、当該建物の存在を考慮しても、本件土地はマンション適地等に該当するとはいえない。

本件土地は下記の事項から・・・広大地の評価の適用を認めるのが相当である。

本件土地開発の標準的な戸建て住宅の敷地面積は190㎡程度と認められ・・・本件土地は・・・著しく広大地と認められること。

本件土地は接面道路から奥行距離の長い形状と認められ戸建住宅の敷地として利用する場合、敷地内の道路開設など公共公益的施設用地を負担する必要が認められる。

2.《裁決要旨》

原処分庁は、4階建の共同住宅が存する本件土地は、中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものであるから、広大地の評価の適用はない旨主張する。

しかしながら、本件土地は、①低層住宅における良好な居住の環境を保護する第一種低層住居専用地域に存し、建ぺい率が50%、容積率が80%であって、建築物の高さ制限は都市計画において第一種高度地区に指定されていることから10m以下であり、

②付近の土地の利用状況は、一部に3階建程度の集合住宅が存するものの、大部分は戸建住宅の用に供され、

③本件相続開始日前5年程度の近隣での宅地開発状況は、戸建住宅となっているものが多くその中には地積2,000㎡以上の土地が含まれていることから、その周辺地域の標準的使用は戸建住宅の敷地であるということができる。

また、本件土地上の4階建共同住宅は、建築後既に35年を経過しており、当該建物建築後の都市計画の変更により本件相続開始日においては同じ4階建の建築物の建築はできないことなどの特殊事情があることからすれば、当該建物の存在を考慮しても、本件土地はマンション適地等に該当するとはいえないというべきである。

そして、①本件土地の地積は、周辺の標準的な戸建て住宅の敷地面積に比して著しく広大と認められ、②接面道路から奥行距離の長い形状で、戸建て住宅の敷地として利用する場合には、敷地内の道路開設など公共公益的施設用地を負担する必要が認められるから、相続税評価額の計算上、広大地の評価の適用を認めるのが相当である。

関連ページ:地積規模の大きな宅地の評価(https://erea-office.com/appraisal/new_koudaichi/